植物 > 被子植物 > スイレン目 > スイレン科 > コウホネ属
分布:栃木県。日本固有種。
栃木県のみに分布する希少なコウホネの仲間。通常水面や水面より上に葉を作らず、沈水葉のみである点が大きな特徴。また、柱頭盤や葯が赤くなるなど、個性の強い種である。生育地は極めて限られており、保全活動が行われている。
シモツケコウホネの概要
花期1) | : | 6-11月 |
希少度 | : | ★★★★★(ごく稀) |
生活形 | : | 多年生の沈水植物 |
生育環境1) | : | 河川や水路 |
学名2) | : | submersus「水中に沈んだ」 |
シモツケコウホネの形態
葉
葉はすべて沈水葉で、通常浮葉を形成しない。
沈水葉は細長く膜質。長さ10-18㎝1)。
花
中央にある柱頭盤は赤くなる。
また、葯が赤く色づくことも他種にはない特徴である3)。
赤みがまだ薄いもの。
萼片の形がいびつなもの。
果実
果実は長さ2-3㎝1)。
果実は赤紫色。
生育環境と保全
全国で栃木県のみに分布し、流れのある河川や水路に生育する。
2006年に記載3)された比較的新しい新種。
生育地はごく限られており、保全活動が行われている。
識別
日本には変種・雑種を除いて6種のコウホネ属植物が分布している。
シモツケコウホネは通常水上葉を形成しない点、葯まで赤くなる点、分布が限られている点などから識別は難しくない。
ただし、コウホネとの間に雑種(ナガレコウホネ)を作るため注意が必要である。
和名 | 国内分布 | 葉の形態 | 柱頭盤 | 備考 |
---|---|---|---|---|
変種オグラコウホネ | 中部~九 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄細く中空 |
変種ベニオグラコウホネ | 中国~九 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄細く中空 |
変種オゼコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄中実 |
変種ネムロコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄中実 |
コウホネ | 北~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 本属で最も大型 |
サイコクヒメコウホネ | 本~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 雑種起源で多様 |
シモツケコウホネ | 栃木県 | 沈 | 赤色 | 沈水植物 |
ヒメコウホネ | 東海 | 沈、浮、抽 | 黄~橙色 | 全体小型 |
雑種サイジョウコウホネ | 本、九 | 沈、浮、抽 | 赤色 | コウホネ×ベニオグラ |
雑種ホッカイコウホネ | 北 | 沈、浮、抽 | 黄~赤色 | コウホネ×ネムロ/オゼ |
雑種ナガレコウホネ | 栃木県 | 沈、(抽) | 黄~赤色 | コウホネ×シモツケ |
文献
1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)Shiga T., Ishii J., Isagi Y., Kadono Y. 2006. Nuphar submersa (Nymphaeaceae), a new species from central Japan. Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 57(2): 113-122.
4)志賀隆 2007. A systematic study of Nuphar (Nymphaeaceae) in Japan with special reference to the role of hybridization. 博士論文. 京都大学.
編集履歴
2021/7/7 公開