サイコクヒメコウホネ Nuphar saikokuensis

植物 > 被子植物 > スイレン目 > スイレン科 > コウホネ属

宮崎県延岡市 2015/9/22
※分布図は目安です。

分布1):本州(中部地方以南)、四国、九州。

コウホネとヒメコウホネ、オグラコウホネの3種が複雑に交雑して生まれたとされる種。コウホネよりもやや小さく、葉もやや丸いことが多いが、交雑起源であることから様々なタイプがあり識別が難しい。従来ヒメコウホネに含められていたもので、2015年に新種として記載された。

サイコクヒメコウホネの概要

花期1)6-10月
希少度★★★(やや稀)
生活形多年生の浮葉~抽水植物
生育環境1)湖沼やため池、河川、水路など

サイコクヒメコウホネの形態

全体

宮崎県延岡市 2015/9/22

浅い場所では水面より上に葉を出す(抽水葉)。
コウホネよりも全体にやや小型。

滋賀県高島市 2014/9/2

水深の深い場所では葉を水面に浮かべる場合が多い(浮葉)。

宮崎県延岡市 2015/9/22

流水環境では水中の葉(沈水葉)が目立つ。
この写真は沈水葉と浮葉の両方が発達している群落。

宮崎県延岡市 2015/9/22

抽水葉は長さ10-30㎝1)で、コウホネより小ぶりでやや円形に近い。

滋賀県高島市 2014/9/2

浮葉は抽水葉と同程度のサイズ。
抽水葉と同じく、コウホネより小ぶりでやや円形に近い。

宮崎県延岡市 2015/9/22

沈水葉は長さ6-30㎝1)、膜質。
コウホネより小型で太短い傾向がある。

宮崎県延岡市 2015/9/22

花は黄色、中央の柱頭盤も黄色。

宮崎県延岡市 2015/9/22

花の直径は3-4㎝1)で、コウホネよりやや小型。

宮崎県延岡市 2015/9/22

コウホネの仲間は雌性先熟で、雌しべが先に、雄しべが後で展開する。

識別

サイコクヒメコウホネはコウホネとヒメコウホネ、オグラコウホネの3種が関係した交雑由来の種で、形態的に変異に富む。

コウホネは全体により大きく、葉は長く、抽水形態をとりやすい。沈水葉もより細長い。

ヒメコウホネは分布が限られ、葉が小さく丸い。

オグラコウホネは抽水葉をつけず、葉は小さく丸く、葉柄が細い。

和名国内分布葉の形態柱頭盤備考
変種オグラコウホネ中部~九沈、浮黄色葉柄細く中空
変種ベニオグラコウホネ中国~九沈、浮赤色葉柄細く中空
変種オゼコウホネ北、本沈、浮赤色葉柄中実
変種ネムロコウホネ北、本沈、浮黄色葉柄中実
コウホネ北~九沈、浮、抽黄色本属で最も大型
サイコクヒメコウホネ本~九沈、浮、抽黄色雑種起源で多様
シモツケコウホネ栃木県赤色沈水植物
ヒメコウホネ東海沈、浮、抽黄~橙色全体小型
雑種サイジョウコウホネ本、九沈、浮、抽赤色コウホネ×ベニオグラ
雑種ホッカイコウホネ沈、浮、抽黄~赤色コウホネ×ネムロ/オゼ
雑種ナガレコウホネ栃木県沈、(抽)黄~赤色コウホネ×シモツケ
コウホネ属6種11分類群の特徴まとめ1,2,3)

サイコクヒメコウホネの分類

サイコクヒメコウホネは従来ヒメコウホネの1型として扱われてきた。
そしてその後の研究で、コウホネ、ヒメコウホネ、場合によってはオグラコウホネも絡んだ複雑な交雑の結果として生まれたものであることが分かった。
種子が稔性を持ち、西日本に広く分布していることから独立種とされ、2015年に記載された4)

文献

1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
3)志賀隆 2007. A systematic study of Nuphar (Nymphaeaceae) in Japan with special reference to the role of hybridization. 博士論文. 京都大学.
4)Shiga T., Kadono Y. 2015. Nuphar saikokuensis (Nymphaeaceae), a new species from central to western Japan. The journal of Japanese botany 90(1): 22-28.

編集履歴

2021/7/10 公開