植物 > 被子植物 > スイレン目 > スイレン科 > コウホネ属
分布1):本州(中部地方以南)、四国、九州。
コウホネとヒメコウホネ、オグラコウホネの3種が複雑に交雑して生まれたとされる種。コウホネよりもやや小さく、葉もやや丸いことが多いが、交雑起源であることから様々なタイプがあり識別が難しい。従来ヒメコウホネに含められていたもので、2015年に新種として記載された。
サイコクヒメコウホネの概要
花期1) | : | 6-10月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 多年生の浮葉~抽水植物 |
生育環境1) | : | 湖沼やため池、河川、水路など |
サイコクヒメコウホネの形態
全体
浅い場所では水面より上に葉を出す(抽水葉)。
コウホネよりも全体にやや小型。
水深の深い場所では葉を水面に浮かべる場合が多い(浮葉)。
流水環境では水中の葉(沈水葉)が目立つ。
この写真は沈水葉と浮葉の両方が発達している群落。
葉
抽水葉は長さ10-30㎝1)で、コウホネより小ぶりでやや円形に近い。
浮葉は抽水葉と同程度のサイズ。
抽水葉と同じく、コウホネより小ぶりでやや円形に近い。
沈水葉は長さ6-30㎝1)、膜質。
コウホネより小型で太短い傾向がある。
花
花は黄色、中央の柱頭盤も黄色。
花の直径は3-4㎝1)で、コウホネよりやや小型。
コウホネの仲間は雌性先熟で、雌しべが先に、雄しべが後で展開する。
識別
サイコクヒメコウホネはコウホネとヒメコウホネ、オグラコウホネの3種が関係した交雑由来の種で、形態的に変異に富む。
コウホネは全体により大きく、葉は長く、抽水形態をとりやすい。沈水葉もより細長い。
ヒメコウホネは分布が限られ、葉が小さく丸い。
オグラコウホネは抽水葉をつけず、葉は小さく丸く、葉柄が細い。
和名 | 国内分布 | 葉の形態 | 柱頭盤 | 備考 |
---|---|---|---|---|
変種オグラコウホネ | 中部~九 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄細く中空 |
変種ベニオグラコウホネ | 中国~九 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄細く中空 |
変種オゼコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄中実 |
変種ネムロコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄中実 |
コウホネ | 北~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 本属で最も大型 |
サイコクヒメコウホネ | 本~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 雑種起源で多様 |
シモツケコウホネ | 栃木県 | 沈 | 赤色 | 沈水植物 |
ヒメコウホネ | 東海 | 沈、浮、抽 | 黄~橙色 | 全体小型 |
雑種サイジョウコウホネ | 本、九 | 沈、浮、抽 | 赤色 | コウホネ×ベニオグラ |
雑種ホッカイコウホネ | 北 | 沈、浮、抽 | 黄~赤色 | コウホネ×ネムロ/オゼ |
雑種ナガレコウホネ | 栃木県 | 沈、(抽) | 黄~赤色 | コウホネ×シモツケ |
サイコクヒメコウホネの分類
サイコクヒメコウホネは従来ヒメコウホネの1型として扱われてきた。
そしてその後の研究で、コウホネ、ヒメコウホネ、場合によってはオグラコウホネも絡んだ複雑な交雑の結果として生まれたものであることが分かった。
種子が稔性を持ち、西日本に広く分布していることから独立種とされ、2015年に記載された4)。
文献
1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
3)志賀隆 2007. A systematic study of Nuphar (Nymphaeaceae) in Japan with special reference to the role of hybridization. 博士論文. 京都大学.
4)Shiga T., Kadono Y. 2015. Nuphar saikokuensis (Nymphaeaceae), a new species from central to western Japan. The journal of Japanese botany 90(1): 22-28.
編集履歴
2021/7/10 公開