植物 > 被子植物 > スイレン目 > スイレン科 > コウホネ属
分布1):北海道、本州、四国、九州。国外では朝鮮半島。
コウホネ属を代表する種で、国内では最も広い分布を持ち、花・葉ともに最も大型である。抽水葉、浮葉、沈水葉の3つのタイプの葉を形成し、環境に応じて姿を変える。他種としばしば雑種を作るため、識別には注意が必要。
コウホネの概要
花期1) | : | 6-10月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 多年生の抽水植物 |
生育環境1) | : | 湖沼やため池、河川、水路など |
コウホネの形態
全体
浅い場所では水面より上に葉を出す(抽水葉)。
水深の深い湖沼などでは葉を水面に浮かべる場合もある(浮葉)。
流れの強い環境では水中の葉(沈水葉)ばかりが見られることもある。
この写真の群落でも、ヒルムシロの仲間が多く分かりづらいが、沈水葉が中心となっている。
沈水葉のみの状態で開花することもある。
ため池に生育する様子。
草姿は他のコウホネ類よりも明らかに大柄で、全体にがっしりした印象を受ける。
葉
抽水葉は長さ20-50㎝で、日本産コウホネ類中最大。
北日本のものは葉が細長く、本州中部以西のものは短い長卵形となる傾向がある1)。
沈水葉は長さ10-50㎝1)、膜質。
見えにくいが、水中を埋め尽くしているギシギシのような形の葉が沈水葉である。
花
花は黄色、中央の柱頭盤も黄色。
コウホネの仲間は雌しべが先に展開し、雄しべは後(雌性先熟)。
花の直径は3-5㎝1)と、他のコウホネ類と比べて大きい。
識別
コウホネの仲間は分類が難しく、交雑による変異もあるため注意が必要である。
柱頭盤が黄色いもののうち、オグラコウホネとネムロコウホネは葉が丸く小さく、葉柄が細く、抽水葉を作らないことから区別できる。
サイコクヒメコウホネはコウホネとヒメコウホネ、オグラコウホネの3種が関係した交雑由来の種で、コウホネとしばしば区別が難しい。花がやや小さいこと、葉がより小さく丸いことなどから判断する。
ヒメコウホネは分布が限られ、葉がより小さく丸い。
ホッカイコウホネはコウホネとネムロコウホネまたはオゼコウホネの雑種で、葉はやや小さく丸く、両種の中間の特徴を示す。
ナガレコウホネはコウホネとシモツケコウホネとの雑種で、分布が限られ、両種の中間の特徴を示す。沈水葉はシモツケコウホネよりもやや幅広く、稀に抽水葉を形成する。
和名 | 国内分布 | 葉の形態 | 柱頭盤 | 備考 |
---|---|---|---|---|
変種オグラコウホネ | 中部~九 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄細く中空 |
変種ベニオグラコウホネ | 中国~九 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄細く中空 |
変種オゼコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 赤色 | 葉柄中実 |
変種ネムロコウホネ | 北、本 | 沈、浮 | 黄色 | 葉柄中実 |
コウホネ | 北~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 本属で最も大型 |
サイコクヒメコウホネ | 本~九 | 沈、浮、抽 | 黄色 | 雑種起源で多様 |
シモツケコウホネ | 栃木県 | 沈 | 赤色 | 沈水植物 |
ヒメコウホネ | 東海 | 沈、浮、抽 | 黄~橙色 | 全体小型 |
雑種サイジョウコウホネ | 本、九 | 沈、浮、抽 | 赤色 | コウホネ×ベニオグラ |
雑種ホッカイコウホネ | 北 | 沈、浮、抽 | 黄~赤色 | コウホネ×ネムロ/オゼ |
雑種ナガレコウホネ | 栃木県 | 沈、(抽) | 黄~赤色 | コウホネ×シモツケ |
文献
1)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
2)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
3)志賀隆 2007. A systematic study of Nuphar (Nymphaeaceae) in Japan with special reference to the role of hybridization. 博士論文. 京都大学.
編集履歴
2021/7/9 公開