分布1,3,5,10):冬鳥として北海道~本州に飛来。北海道で冬に見られるのは本種で、北日本ほど多い。琵琶湖周辺でも少数がほぼ毎年越冬する10)。国外ではユーラシア大陸タイガ帯で広く繁殖し、冬は南に渡る3)。
冬鳥として主に北日本に渡来するハクチョウの仲間。コハクチョウよりも北の地域で多く見られる。餌付け場所によく集まり、至近距離で観察することができる野鳥の一つである。
オオハクチョウの概要
希少度 | : | ★★(普通) |
全長1) | : | 140-165㎝ |
生息環境1) | : | 湖沼、内湾、農耕地、河川。 |
学名2) | : | cygnus「ハクチョウ」ギリシャ語”kuknos”から |
英名5) | : | Whooper Swan「叫ぶハクチョウ」 |
オオハクチョウの形態
成鳥
成鳥は全身の羽毛が白い。
嘴の黄色部は黒色部より面積が広く、三角形状に突出するのが特徴。
コハクチョウの黄色部はより狭い。
別個体。
別個体。
着地態勢の成鳥。
脚は黒く、第1趾は痕跡的で、第2~第4趾にかけて水かきがある。
同一個体。
翼を含め、羽毛は全身白い。
幼鳥
幼羽は灰褐色のため、一見して成鳥と異なる。
越冬中に徐々に成鳥羽に近づいていく。
幼鳥も嘴の淡色部の形状が成鳥と共通している。
幼鳥(別個体)。
春先にかけて嘴の黄色みが増す傾向。
幼鳥(別個体)。
年齢の識別
幼羽は全身灰褐色のため、一見して成鳥と区別可能。
越冬地において、幼鳥は徐々に成鳥羽へと換羽するが、雨覆をはじめ多少なりとも幼羽を残すため成鳥と見間違うことは普通ないと考えられる。
第2回冬羽は多くの個体で成鳥と同じで、識別は困難4)。
中には頭部や雨覆、尾羽に幼羽を残す個体もいるという4)。
識別
コハクチョウ、コブハクチョウとの識別
オオハクチョウ(本種)は主に北海道~関東で越冬する。
コハクチョウは東北~中国地方で越冬し、オオハクチョウより小さく嘴の色彩が異なる。
コブハクチョウは外来種で一年中みられ、頭部の色彩が大きく異なる。
ナキハクチョウは最も大きく、嘴が全体黒色。極めて稀な迷鳥。
※コハクチョウの幼鳥ははじめ嘴の先端付近までピンク色をしており、のちにその部分が黒色となって淡色部が残る4)。上の識別画像はピンク色部が黒くなった後の個体である。
※コブハクチョウの幼鳥は全身の羽毛が褐色で、嘴の大部分が褐色みのあるピンク色4)。目先が黒い点は一貫している。上の識別画像は2年目以降の若鳥と考えられる。
コハクチョウ(左)とオオハクチョウ(右)。
体サイズの違いは並ぶと分かりやすい。
分類
亜種はない(単型種)。
生態
食性
多くのカモ類と異なり、本種は昼行性であり、主に昼間に採餌を行う7)。
宮城県の伊豆沼・内沼周辺における調査では、オオハクチョウはハスの地下茎(レンコン)を主要な餌としており、またマコモの地下茎も採餌していることが確認されている6,7)。
なお本種は水田(陸地)でも見られるが、池沼における採餌を好む傾向があり、水位が上がってレンコンに首が届かなくなるにしたがって水田へ移動する傾向が確認されている9)。
また本種は餌付けへの依存度も高く、北日本の越冬地における給餌場所では本種が集まっている姿を見かける機会が多い(例えば8))。
文献
1)桐原政志・山形則男・吉野俊幸 2009. 『日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版』文一総合出版.
2)James A. Jobling 2010. Helm Dictionary of Scientific Bird Names. Christopher Helm.
3)榛葉忠雄 2016. 『日本と北東アジアの野鳥』生態科学出版.
4)Jeff Baker 2016. Identification of European Non-Passerines. Second Edition. British Trust for Ornithology.
5)Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2023. IOC World Bird List (v13.2). doi : 10.14344/IOC.ML.13.2.
6)嶋田哲郎, 植田健稔, 星雅俊, & 森晃. (2017). 水位変動がオオハクチョウの採食場所選択に及ぼす影響. Bird Research, 13, S5-S9.
7)嶋田哲郎, 植田睦之, 高橋佑亮, 内田聖, 時田賢一, 杉野目斉, … & 矢澤正人. (2018). GPS-TX によって明らかとなった越冬期のオオハクチョウ, カモ類の環境選択. Bird Research, 14, A1-A12.
8)嶋田哲郎, 進東健太郎, & 藤本泰文. (2008). 伊豆沼・内沼におけるガンカモ類の給餌へのエネルギー依存率の推定. Bird Research, 4, A1-A8.
9)嶋田哲郎, 植田健稔, 星雅俊, & 森晃. (2017). 水位変動がオオハクチョウの採食場所選択に及ぼす影響. Bird Research, 13, S5-S9.
10)滋賀県 2023. 2023年 水鳥一斉調査結果(過去10年間の記録と比較). https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/330247.html 2024/1/29閲覧.
編集履歴
2024/1/29 公開
2024/3/3 分布図を差し替え