植物 > 被子植物 > コショウ目 > ウマノスズクサ科 > カンアオイ属
ウスバサイシンとよく似た落葉性のカンアオイの仲間。雄しべや花柱の数がウスバサイシンから半減しているが、九州中部ではウスバサイシンと同数のものや中間のものも見られる。
クロフネサイシンの概要

花期1) | : | 4月下旬-5月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 落葉性の多年草 |
生育環境1) | : | 落葉広葉樹林、針葉樹林および混交林の林床や林縁 |
学名2) | : | dimidiatus「ふたつの異なるまたは等しくない部分に分かれた」 |
クロフネサイシンの形態
葉
花
雄しべ・花柱の数の変異(ウスバサイシンとの連続)
通常、クロフネサイシンは雄しべが6個、花柱が3個で、近縁のウスバサイシンの半数である。
しかし、クロフネサイシンの分布南端付近にあたる九州中部では雄しべ・花柱の数がウスバサイシンと同じ、あるいは中間的な個体がかなり見られる(中村ら 1982)3)。
このような個体はウスバサイシンと一見して区別できないが、これらの地域でウスバサイシンと分布が接していないことや、以下の点などからクロフネサイシンと判断されるという。
・葉がウスバサイシンよりやや小さく、葉先がウスバサイシンよりも鋭尖頭である。
・萼筒内上部の毛は3(4-7)細胞毛である(ウスバサイシンは単(2-3)細胞毛)。
・栽培すると雄しべや花柱の数が減少し、クロフネサイシンの典型に近くなる。
この変異は地理的に連続しており、ウスバサイシンからクロフネサイシンへの分化が様々な段階にあることを示唆しているものと考えられる。
識別
葉が落葉性であることで、他の大部分のカンアオイの仲間と識別できる。
詳細な識別点については、ウスバサイシンのページを参照。
文献
1)Yamaji H., Nakamura T., Yokoyama J., Kondo K. 2007. A taxonomic study of Asarum sect. Asiasarum (Aristolochiaceae) in Japan. Journal of Japanese Botany 82(2):79-105.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)中村輝子・遠藤次郎・浜田善利 1982. クロフネサイシンの変異. 植物研究雑誌 57(12):366-375.
4)中西弘樹 2015. 『長崎県植物誌』長崎新聞社.
編集履歴
2021/8/12 公開
2025/1/26 体裁を調整