ナンゴクウラシマソウ Arisaema thunbergii subsp. thunbergii

植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > テンナンショウ属

宮崎県綾町 2022/4/9
※分布図は目安です。

分布1,2):近畿、中国、四国、九州。ウラシマソウよりも南寄りに分布するが分布は重複する。海外では韓国(南部島嶼)。

近畿以西に分布するテンナンショウの仲間。「浦島太郎の釣り糸」でお馴染みのウラシマソウは本種の亜種とされる。花序の付属体(「釣り糸」の部分)の付け根が白いのがウラシマソウとの明瞭な違いで、葉にしばしば美しい白斑が入るのも特徴的である。

ナンゴクウラシマソウの概要

花期2)3-5月。
希少度★★★(やや稀)
生活形多年草
生育環境2)林下、林縁
学名3)thunbergii…スウェーデンの植物学者カール・ペーター・トゥーンベリへの献名

ナンゴクウラシマソウの形態

宮崎県綾町 2022/4/9

花序は地際につき、付属体は先が糸状となり長く伸びる。

宮崎県綾町 2022/4/9

仏炎苞の舷部は紫褐色。
本種は雌雄偽異株で雄株から雌株に性転換する2)
この株は仏炎苞下部にポリネーターが抜け出す隙間があり、雄株と考えられる。

宮崎県綾町 2022/4/9

雄花序(別株)。
花序は亜種のウラシマソウに似るが、付属体の基部が黄白色で細かい襞が密生している点が明瞭に異なる1,2)
この襞状の部分はきのこに擬態してポリネーターのハエを誘引するのに役立っていると考えられている2)

宮崎県綾町 2022/4/9

葉は1枚で鳥足状に分裂する2)
小葉は11~17枚2)
ウラシマソウより小葉の幅が狭く、中心にしばしば白斑が入る点が異なる2)

兵庫県 2016/4/17

別産地の株。
なお、ナンゴクウラシマソウでは雌個体の方が葉軸が発達する傾向があるという4)

高知県越知町 2016/7/16

より若いと考えられる株(別産地)。

兵庫県 2016/4/17

若い株の葉。

識別

ウラシマソウはナンゴクウラシマソウの亜種とされており、より北寄りに分布する。
一部では分布が重なり、花序付属体の形態が両亜種の中間的な個体が見られることがある2)
ヒメウラシマソウは別種で、山口県と九州に分布する。
識別点についてはウラシマソウのページを参照。

また、台湾には別亜種タイワンウラシマソウA. thunbergii subsp. autumnaleが分布し、仏炎苞の形態が異なるほか、野生下では秋に開花する2)

分類

ウラシマソウのページを参照。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 2018. 『日本産テンナンショウ属図鑑』北隆館.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)大森崇広, & 邑田仁. (2004). ウラシマソウの亜種間における形態的分化. 植物研究雑誌79(4), 247-254.

編集履歴

2024/12/6 公開