ミヤコアオイ Asarum asperum var. asperum

植物 > 被子植物 > コショウ目 > ウマノスズクサ科 > カンアオイ属

京都市左京区 2016/4/11
※分布図は目安です。

分布1):本州(近畿以西~島根県)、四国西部、九州(大分県、熊本県)。日本固有種。
変種のツチグリカンアオイは四国南東部。

西日本に分布するカンアオイの仲間。キンチャク状に強くくびれる形の花が特徴的である。近畿地方では最も広く普通に見られるカンアオイの一つ。ギフチョウの食草としても知られる。

ミヤコアオイの概要

花期1)3-4月
希少度★★(普通)
生活形常緑性の多年草
生育環境1)低山地の広葉樹林下
学名2)asper「ざらざらした」

ミヤコアオイの形態

滋賀県高島市 2016/4/16

葉は常緑性で長さ6-10㎝1)
表面には雲紋状に斑が入る。

滋賀県高島市 2016/4/16

表面には短毛が生える。裏面は無毛。

滋賀県高島市 2016/4/16

花は葉の基部につき、筒状となる。
3-4月に開き淡紫褐色。
萼筒内壁のひだは縦が15本、横が2-3本1)(外からもある程度確認できる)。

滋賀県高島市 2016/4/16

萼筒は上部が強くくびれる。
萼裂片は斜めに開出し卵状三角形1)

京都市左京区 2016/4/11

萼口は狭く、中はあまり見えない。

識別

カンアオイ属は国内に58種ほどあり、形態での識別には花の観察が重要である(一覧と分類はこちら)。
ウスバサイシンの仲間やフタバアオイは葉が落葉性で質が薄いため、簡単に除外できる。

花の内部形態での同定

以下の特徴をすべて確認することにより産地によらずミヤコアオイと同定できる(1)より作成)。

  • 常緑性のカンアオイ属である。(葉の質は厚い)
  • 萼筒内壁にはほぼ全体にひだがあり、格子状に縦横同程度に発達する。
  • 花柱の先端に突起がなく、柱頭が頂生する。(他の多くの種では花柱の先端に角状の突起があって2つに割れ、柱頭が側生する。)
  • 柱頭は細長く伸長することはない。
  • 葉にはふつう光沢がなく、有毛

分布を考慮した外部形態からの識別

上の方法では花の解剖が必要となるため、近畿~九州に分布する種に限った場合の簡易識別点を以下に示す。
以下がすべて確認できればミヤコアオイと考えられる。(参考程度)

  • 常緑性のカンアオイ属である。
  • 花の萼筒は上部で強くくびれる。(アツミカンアオイ、カンアオイ、コウヤカンアオイ、コトウカンアオイ、スエヒロアオイはくびれない。ツクシアオイ、マルミカンアオイ、ジュロウカンアオイはくびれが弱い。)
  • 花の萼筒の外面には、内壁のひだに対応した縦横の格子状のすじ(しわ)が見られる。(サンヨウアオイ、トサノアオイは縦ひだのみ)
  • 萼裂片の縁が強くうねることはない。(ウンゼンカンアオイ、サツマアオイ、タイリンアオイは萼裂片の縁が強くうねる。また、萼筒の形も異なる。)
  • 萼裂片の先が細く伸びることはない。(サカワサイシンはやや伸び、オナガカンアオイは長く伸びる。)

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.

編集履歴

2021/8/12 公開