植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > タブノキ属
分布1,2,4,5):本州(関東(?)・中部以西)、四国、九州、琉球(~与那国)。神奈川では移入とされ7)、静岡が東限の可能性がある5,8)。普通に見られるのは近畿以西と思われる。海外では台湾、朝鮮半島南部、中国南部1)。
暖地の渓谷沿いなどで見られるクスノキ科の常緑樹。慣れないうちは特徴が掴みづらく、識別に苦労する樹種の一つ。葉裏の色や冬芽の形などを丁寧に観察することが重要である。
ホソバタブの概要
花期1) | : | 4-5月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) 南ほど普通。 |
生活形1,2) | : | 常緑高木 |
生育環境2,6) | : | 丘陵~山地の谷沿い。暖地のカシ林。渓谷沿いで優占群落をつくることもある。 |
学名3) | : | japonica「日本の」 |
別名1,2,6) | : | アオガシ |
ホソバタブの形態
葉
葉はタブノキを細くしたような形で、縁が波打つことが多い。
全縁、互生。
葉裏はタブノキに似た灰白色。
はじめ毛があるがのちに無毛1)。
波打つ葉が特徴的で、典型的なものは見分けやすい。
基部・先端ともに徐々に細まって尖る葉形。
画像より細長い葉も時に見られ、別属のバリバリノキと間違いやすいため注意。
別名アオガシという通り、カシ類にも似て見え、初心者には識別難易度の高い樹種の一つである。
ただし葉裏が白みを帯びる特徴は安定しており、識別の大きな手掛かりとなる。
冬芽の形状もあわせてチェックしたい。
冬芽
冬芽は赤みを帯びておりタブノキに似るが、タブノキほど丸みを帯びず、芽鱗の縁の毛も短い1)。
動き始めた冬芽。
花
花は春、新しい枝の腋に円錐花序を出す。
新葉が赤くならない点もタブノキとの識別点。
花は両性。
樹皮
樹皮は灰褐色でなめらか。皮目がある6)。
若い個体の樹皮。
樹形
若い個体の樹形。
水平方向に枝を広げる2)。
成木を下から見上げたところ。
識別
識別難易度はやや高めで、まずタブノキの仲間であることを見分けたうえで近縁種との識別点をチェックする必要がある。
ホソバタブとカシ類との識別
別名アオガシという通り、カシ類に一見似て見える場合がある。
ウラジロガシ、ツクバネガシ、シラカシ等々は葉形もやや細長く間違えやすいかもしれないが、ホソバタブには鋸歯が出ることはないし、葉裏の色合いや質感も大きく異なる。
冬芽を確認すればより明瞭に識別が可能。ホソバタブでは丸みを帯びており赤いのに対して、カシ類では角張っており赤くなることはない。
ホソバタブとタブノキの識別
同属のタブノキとは時によく似るため注意。
タブノキの葉はふつうホソバタブより幅広く、先寄りで幅が最大となる。
ホソバタブの葉は細長く、中央~やや基部寄りで幅が最大となる。
より確実には冬芽を確認する。
両種の冬芽は赤い色でよく似るが、タブノキの冬芽はより太く丸みを帯びる傾向にあり、また芽鱗の縁の毛もホソバタブより長い。
下記画像参照。
ホソバタブとバリバリノキの識別
両種は時に非常によく似ることがあり、識別には注意が必要。
典型的なものではホソバタブよりもバリバリノキのほうが葉が細長いが、かなり変異があるため冬芽など他の特徴もあわせて確認するとよい。
またバリバリノキの葉の側脈は葉裏で隆起して目立つが、ホソバタブでは側脈は隆起せず目立たない点も異なる。
冬芽については下記画像参照。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
5)田中信行・松井哲哉 (2007-) PRDB:植物社会学ルルベデータベース, 森林総合研究所. URL: http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html 2024/1/16閲覧.
6)茂木透・勝山輝男・太田和夫・崎尾均・高橋秀男・石井英美・城川四郎・中川重年 2000. 『樹に咲く花―離弁花〈1〉 (山渓ハンディ図鑑) 改訂第3版』山と溪谷社.
7)神奈川県植物誌調査会 2018. 『神奈川県植物誌2018電子版』神奈川県植物誌調査会.
8)静岡県 2020. 『静岡県版 植物レッドリスト 2020』 http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-070/wild/red_replace.html 2024年1月16日閲覧.
編集履歴
2024/1/16 公開