バリバリノキ Actinodaphne acuminata

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宮崎県都城市 2022/3/20
※分布図は目安です。

分布1,2,4,5,6,7,8):本州(千葉県以西;島根県以南?8))、四国、九州、琉球(~与那国)。南ほど多い。海外では台湾7)。福建省の分布は現状不明7)

暖地の照葉樹林で見られる常緑のクスノキ科。変わった和名と細長い葉が特徴的で覚えやすいが、葉の形には変異があり、時にホソバタブと間違えやすいため注意。分かりづらいときは冬芽を確認することで識別しやすくなる。

バリバリノキの概要

花期1,5)8月
希少度★★★(やや稀)
生活形1,2,5)常緑高木
生育環境沿海~低山の照葉樹林2)。暖地のシイ林やカシ林に混生する5)
学名3)acuminatus「先細になって先端が細長い(鋭先形の)」
和名5)かたい葉が触れ合うときの音による、枝葉に油が多くよく燃えることによる、などの説があるがはっきりしない。
別名1,2,5)アオカゴノキ

バリバリノキの形態

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉は互生、枝先に集まってつく。
典型的なものは極めて細長く、葉身長12-25㎝2)

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉裏は白く、中央脈は黄色を帯びる傾向4)

宮崎県都城市 2022/3/20

葉裏の葉脈はよく隆起する傾向。
ホソバタブの葉の細長い個体との識別点の一つである。

福岡県宗像市 2021/6/27

あまり細長くない葉。
葉裏の葉脈が隆起して目立つことが手掛かりになる。

福岡県宗像市 2021/6/27

日の当たる場所の葉は印象が異なる。

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉裏。

鹿児島県垂水市 2020/9/20

幼木。
ここまで細長いと分かりやすい。

三重県紀北町 2016/8/27

幼木。
冬芽の形も大きな手掛かりになる。

冬芽

高知県室戸市 2015/11/22

冬芽(葉芽)は長楕円形で大きい5)
芽鱗の縁はしばしば黒褐色に色づく。
写真のものは縁の色づきが弱い。

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉のよく似る場合があるホソバタブの冬芽が赤いのに比べ、本種の冬芽は赤みが弱い。
冬芽の色や形は近縁種との重要な識別点となる。

福岡県宗像市 2021/6/27

花芽は球状で柄があり、新葉の腋につく5)
花は8月に咲き、雌雄異株。

果実

宮崎県都城市 2022/3/20

未熟な果実。
翌年の6月ごろに紫黒色に熟す1,5)

宮崎県都城市 2022/3/20

果実は楕円形で長さ約15㎜1,5)

識別

典型的な個体は葉が極めて細長いため見分けやすく、特に似た種もない。
ただし同じクスノキ科のホソバタブとはしばしば見分けが難しいため注意が必要。
なおタイミンタチバナも葉が細長いが、葉身が平らで葉脈が目立たず、印象が大きく異なる。

バリバリノキとホソバタブの識別

バリバリノキの葉があまり長くない場合や、ホソバタブの葉が細長い場合に互いによく似る。
①バリバリノキの葉裏の葉脈は隆起して目立つが、ホソバタブでは目立たない。
②バリバリノキの冬芽は赤くないが、ホソバタブの冬芽は赤い。
③バリバリノキの冬芽の芽鱗は縁がしばしば褐色になる。

分類

本種はここではバリバリノキ属Actinodaphneとしているが、ハマビワ属Litseaに含められることもある1,7)
また、逆にハマビワ属のカゴノキがバリバリノキ属とされたこともある1)
Flora of Chinaでは、総苞片の形状からバリバリノキをActinodaphneに含めるのが適切だろうとしている7)
なお、葉緑体DNAを比較した近年の研究では、Actinodaphneはシロダモ属Neolitseaに最も近縁である可能性が指摘されている9)
同論文で、カゴノキはActinodaphneではなくLitseaに含まれることが示されている9)

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
5)茂木透・勝山輝男・太田和夫・崎尾均・高橋秀男・石井英美・城川四郎・中川重年 2000. 『樹に咲く花―離弁花〈1〉 (山渓ハンディ図鑑) 改訂第3版』山と溪谷社.
6)熊谷宏尚, 高橋啓二, & 沖津進. (1992). 千葉県における木本植物の分布.
7)Missouri Botanical Garden, Harvard University Herbaria 2008. 『Flora of China Volume 7』 http://www.efloras.org 2024/2/17閲覧.
8)島根県 2013. 『改訂しまねレッドデータブック2013植物編』https://www.pref.shimane.lg.jp/infra/nature/shizen/yasei/red-data/kaiteishimaneRDB2013plant.html 2024年2月17日閲覧.
9)Zhang, Y., Tian, Y., Tng, D. Y., Zhou, J., Zhang, Y., Wang, Z., … & Wang, Z. (2021). Comparative chloroplast genomics of Litsea Lam.(Lauraceae) and its phylogenetic implications. Forests12(6), 744.

編集履歴

2024/2/17 公開
2024/11/30 概要に追記