フタバアオイ Asarum caulescens

植物 > 被子植物 > コショウ目 > ウマノスズクサ科 > カンアオイ属

愛媛県東温市 2019/4/30
※分布図は目安です。

分布1):本州~九州。国外では中国大陸。

本州~九州の山地に広く見られる落葉性のカンアオイの仲間で、葉がふつう2つずつつくことからこの名がある。徳川家の家紋の由来となったことや、京都府賀茂神社の葵祭で用いられることで有名。分類的には国内のカンアオイ属内では原始的な部類に属し、萼片が完全に合着しない特徴を持つ。

フタバアオイの概要

花期1)3-5月
希少度★★★(やや稀)
生活形落葉性の多年草
生育環境山地の林床
学名3)caulescens「茎がある」

フタバアオイの形態

奈良県御所市 2019/6/16

葉は本属では珍しく落葉性で質が薄い。
ふつう茎の先端に対生状に2個つき、長さは4-8㎝1)
基部が心形にえぐれる形が特徴的。
両面および葉縁に短毛が生える。

愛媛県東温市 2019/4/30

花は淡紅色で春に開く。
3つの萼片は完全には合着せず、不完全な筒型となる(本属の中で本種とオナガサイシンの2種のみの特徴)。
黒く見えるのが雄しべで、2段になっており合計12個ある。
柱頭は合着した花柱の先端に6個ある。

愛媛県東温市 2019/4/30

萼片の外面、および花柄には短毛が生える。
萼片の先はふつうほぼ完全に反り返り、萼筒と密着する。

愛媛県東温市 2019/4/30

花は下向きに開く。

識別

国内のカンアオイ属の大部分はカンアオイ亜属に含まれるが、
本種は国内に2種しかないフタバアオイ亜属に属しており、花や葉の形態が他種とは大きく異なる1,2)

花での識別

フタバアオイの花は3つある萼片が完全には合着せず、不完全な筒型となる点で他種と区別できる。
(=互いに接合はしているが、境界がはっきり確認できる。)
唯一本種と同じフタバアオイ亜属に属しているオナガサイシンは沖縄島にあり、常緑性で花は淡緑褐色。

葉での識別

国内のカンアオイ属のうち、葉が落葉性であるものは本種の他にウスバサイシンの仲間7種のみである。
(ウスバサイシン節7種の一覧はこちらを参照。)
ウスバサイシンの仲間は葉が似るが、フタバアオイのほうが葉が小型で丸みが強く、表面の光沢も目立つ。
分布は重複するため、慣れるまでは花を確認することが重要である。

フタバアオイ
ウスバサイシン

カンアオイの仲間以外ではユリワサビやスミレの仲間などに葉がやや似るが、慣れれば間違うことはない。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Okuyama Y., Goto N., Nagano A. J., Yasugi M., Kokubugata G., Kudoh H., Qi Z., Ito T., Kakishima S., Sugawara T. 2020. Radiation history of Asian Asarum (sect. Heterotropa, Aristolochiaceae) resolved using a phylogenomic approach based on double-digested RAD-seq data. Annals of Botany 126(2): 245-260.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.

編集履歴

2021/8/10 公開