ウンゼンマムシグサ Arisaema unzenense

植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > テンナンショウ属

長崎県雲仙市 2021/5/3
※分布図は目安です。

分布1,2):長崎県雲仙岳固有種。

長崎県雲仙岳に固有のテンナンショウの仲間。糸状に細くなる付属体が特徴的な種で、ツクシマムシグサに近縁と考えられる。

ウンゼンマムシグサの概要

花期2)4-5月ごろ
希少度★★★(やや稀)
生活形多年草
生育環境1)山地の林縁など
学名unzenense「雲仙の」

ウンゼンマムシグサの形態

長崎県雲仙市 2021/5/3

仏炎苞は緑色、葉身よりやや早く展開する2)
舷部は筒部と同長~短く、先が尖る。
口辺部はわずかに開出する。

長崎県雲仙市 2021/5/3

付属体が上部で糸状に細くなり(1.5㎜以下)前に曲がるのが顕著にして最大の特徴。
この写真のものよりさらに細く見えるものもある。

葉・全草

長崎県雲仙市 2021/5/3

偽茎部は葉柄部より長い。
花序柄は葉柄とほぼ同長~より長い。
葉は通常2個、葉軸が発達し、小葉は7-15個2)
しばしば細鋸歯がある。

識別

本種は分布が局限され、長崎県の雲仙岳にのみ生育している。
そのうえ、付属体が糸状に細くなるという顕著な特徴を有しているため、識別に迷うことは少ない。
同所的に見られるツクシマムシグサは時によく似る。ウンゼンマムシグサと比較し、付属体はより太く、舷部はより長く伸び、舷部の白条がしばしば半透明に広がる。葉は通常1個だが大型のものでは2個のこともある(ウンゼンマムシグサでは通常2個、小型のものでは時に1個)。変異があるため、株によっては識別に困ることもあるかもしれない。
またキリシマテンナンショウも同所的に見られるが、花序は低い位置につき、仏炎苞の形状や色彩が大きく異なるため識別は容易。

ウンゼンマムシグサの生態

性転換

雌雄偽異株で、株の成長に伴い雄株から雌株に性転換する2)

分類

本種はツクシマムシグサに似るが明らかに異なる分類群として、1982年に芹沢によって記載された3)
それによると、本種は初めナガハシマムシソウA. angustifoliatumと同定され、その後タシロテンナンショウ(ツクシヒトツバテンナンショウ)の変種A. tashiroi var. unzenseとして仮称された経緯があるという。
しかしタシロテンナンショウとの共通点は少ないとして、ツクシマムシグサに近縁の独立種として扱うのが適当とされた3)

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 2018. 『日本産テンナンショウ属図鑑』北隆館.
3)芹沢俊介. (1982). 日本産テンナンショウ属の再検討 (6) ツクシマムシグサ群. 植物研究雑誌57(3), 85-90.

編集履歴

2025/1/11 公開