植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > テンナンショウ属
分布1,2):近畿地方と、それに隣接する各県(愛知、岐阜、福井、中国地方東部)。日本固有種。
近畿地方を中心に分布するテンナンショウの仲間。花序付属体の先端が少し膨らみ緑色になるという特徴を持つ。かつて同種とされた近縁のスルガテンナンショウよりも西側で見られ、近畿地方においては馴染み深いテンナンショウの一つである。
ムロウテンナンショウの概要
花期2) | : | 4-5月ごろ |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形 | : | 多年草 |
生育環境 | : | 山地の林下 |
学名 | : | yamatense「大和地方の」 |
ムロウテンナンショウの形態
花
仏炎苞は全体緑色2)。
口部は狭く開出する2)。
舷部は筒部より短い2)。
付属体は上部がやや細く、やや前に曲がって、先端が濃緑色の円頭で終わる2)。
付属体の形状には若干の変異がある。
なお舷部内面には乳頭状突起が密生し、白っぽく見える(スルガテンナンショウと共通する特徴)2)。
葉・全草
葉は通常2個で、第2葉はふつう第1葉よりかなり小さい。
葉柄は偽茎部よりはるかに短い2)。
小葉間には葉軸が発達し、小葉は9-15個2)。
しばしば細かい鋸歯がある。
鞘状葉や偽茎部の斑はやや赤みが強い2)。
果実
果実は10-12月ごろに熟す2)。
識別
本種の最も顕著な特徴は、①仏炎苞舷部内面に乳頭状突起が密生する、②花序付属体の先端がやや前傾し膨らんで緑色となる、という点である。
スルガテンナンショウはかつて本種の亜種とされたもので、現在では別種とされ、本種よりも東の岐阜県から静岡県にかけての地域に分布する。上記①の特徴が共通し、花序付属体についても先端が膨らむが、緑色とはならず、本種よりも明らかに大きく球状に膨らむ。ムロウテンナンショウとの中間形が見られることがある。
ホソバテンナンショウにも似ているが、上記①②の特徴により識別可能。
なお、本種の仏炎苞は緑色であるが、紫褐色のものが見られた場合には他種との雑種である可能性がある2)。
なお、本種は近畿地方の広範囲においてかなり普通に見られ、兵庫県においても「県内に最も普通にみられる」とされる4)。
ムロウテンナンショウの生態
性転換
雌雄偽異株で、株の成長に伴い雄株から雌株に性転換する2)。
分類
スルガテンナンショウはかつて本種(ムロウテンナンショウ)の亜種とされたが、現在では別種とされる2,3)。
詳細はスルガテンナンショウのページを参照。
また、ムロウマムシグサはキシダマムシグサの別名であり、ムロウテンナンショウとは全くの別種であるため注意が必要である。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 2018. 『日本産テンナンショウ属図鑑』北隆館.
3)芹沢俊介. (1980). 日本産テンナンショウ属の再検討 (2) ムロウテンナンショウ群. 植物研究雑誌, 55(12), 353-357.
4)小林禧樹. (2004). テンナンショウ属からみた兵庫県のフロラ (Doctoral dissertation, Kanazawa University).
編集履歴
2024/12/28 公開