分布1,2):北海道~九州。北海道の分布は西寄りに限られ、南は鹿児島県まで見られる。千葉県には分布していない。日本固有種。
赤褐色の翅と金属光沢のある体が美しいカワトンボの仲間。国内の均翅亜目(腹部が細い、イトトンボ科などを含むグループ)の中で最大の種である。渓流に見られる種で、メスが長時間潜水産卵を行うことでも有名。
ミヤマカワトンボの概要
出現時期 | : | 初夏~夏。近畿では5-8月に多い2)。時に4月や9~10月1,2)。幼虫越冬。 |
希少度 | : | ★★(普通) |
全長1) | : | オス65-80㎜、メス63-77㎜ |
生息環境 | : | 丘陵地~山地の樹林に囲まれた渓流1)。川幅の広い河川の上~中流にも見られる3)。中流域に生息する場合、背後にはまとまった山塊が必要2)。 |
産卵 | : | 単独で浅い水中の植物組織内に産卵する2)。状況に応じて潜水産卵を行い、1時間以上の長い時間潜ることができる1)。 |
ミヤマカワトンボの形態
オス
翅は赤褐色で、後翅の先寄りに濃褐色斑がある。
独特な色彩で見分けやすい。
腹部には金属光沢があり美しい。
体長は国産の均翅亜目で最大。
オス。
翅色に個体差や地域差はほぼない。
腹端下面にはアオハダトンボと同様に白い部分がある。
翅を開いたオス。
メス
メスはオスよりも翅の赤褐色が薄い。
また、オスにはない白い偽縁紋があるため遠目にもオスと識別可能。
偽縁紋についてはアオハダトンボのページを参照。
識別
特に似た種はいない。
ニホンカワトンボやアサヒナカワトンボにも翅が褐色の個体がいるが、ミヤマカワトンボのような後翅先寄りの濃褐色斑はない。
生態
潜水産卵
本種はメスがしばしば潜水産卵することで知られ、1時間を超えて潜ったまま産卵することもあるという1)。
メスの翅表面には細かい毛が生えており、これによって空気の膜が作られることで水中で呼吸できると考えられている1)。
オスの求愛
本種は腹端下面にアオハダトンボと同じように白い部分がある。
この部分をメスに見せることで、アオハダトンボと似た求愛行動を行う2)。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)山本哲央・新村捷介・宮崎俊行・西浦信明 2009. 『近畿のトンボ図鑑』いかだ社.
3)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
編集履歴
2024/2/7 公開