植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > ハマビワ属
分布1,2,4,8,9):本州(岡山・山口)、九州(西部・南部)、琉球(~奄美群島)。伊豆半島以西の各地に野生化し分布を広げている2,8,9)。海外では台湾、中国、ヒマラヤ1)。
明るい緑色の葉が特徴的なクスノキ科の落葉樹。もともと普通に見られるのは九州以南のみであったが、生け花用として栽培されていたものが逸出し、東海以西の各地で見られるようになった。
アオモジの概要
花期1) | : | 3-4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形1,2) | : | 落葉小高木 |
生育環境2,4) | : | 暖温帯の林縁など。攪乱を受け明るい場所。 |
学名3) | : | cubeba…クベバ(コショウ科のヒッチョウカPiper cubeba)が由来となっている可能性がある。 |
アオモジの形態
葉
葉は基部寄りで幅が最大、先はよく尖る。
葉身長7-15㎝1)。
葉裏は粉白色。
全体無毛1,2)。
葉は互生。
同じ幼木の拡大。
幼木。
先駆(パイオニア)樹種であり、道端などの明るい場所で幼木を見かける機会も多い。
同じ幼木。
四国にも分布拡大している。
樹形
球形~楕円形の樹形となる5)。
黄葉したアオモジ。
冬芽
花芽は丸く、柄が大きく湾曲し下向きにつく。
まだ小さい花芽。
葉芽は紡錘形、葉状の大きな芽鱗に包まれる5)。
樹皮
樹皮は緑褐色。縦に裂けた灰色の皮目が散在する5)。
識別
ハマビワ属だが、同属のハマビワやカゴノキは常緑樹であり全く似ていないので識別に問題はない。
同じクスノキ科のクロモジやカナクギノキなどと間違えないように注意。これらはアオモジほど葉先が細長く尖らない。
またモクレン科のタムシバは個体によっては一見葉が似て見える。
葉の形状や裏表の質感が意外と似ている場合があるが、タムシバには枝を一周する托葉痕があることを確認すれば間違うことはない。
冬芽や樹皮も明確に異なる。
分類
以前は大陸のものと区別して日本固有種Litsea citriodoraとされたが(例えば5))、現在では区別せずにL. cubebaとされるのが一般的である。
移入種としてのアオモジ
アオモジの本来の分布は九州以南(および岡山と山口)に限られるが、近年になって東海地方以西2)の各地に分布の拡大が見られ、植栽由来の野生化とみられている。
九州においても福岡県や佐賀県で分布が拡大しているほか6)、近畿地方でも奈良県の生駒山系7)など各地で野生化が見られる。東は静岡県の伊豆地方まで帰化が確認されているようである8,9)。
また四国でも徳島での野生化が指摘されているほか9)、筆者自身も高知県内で観察している。
神奈川県植物誌には記載がなく10)、伊豆半島が逸出帰化の東限である可能性が高い。
生駒山系の例では、生け花に利用するために栽培していた株が逸出したことが推定されている7)。
また果実が柑橘に似た芳香を持つため、精油の製造にも使われるが、そのほとんどは中国で生産されており、国内での栽培目的は花卉としての利用がメインのようだ9)。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)水谷智洋 2009. 『羅和辞典 〈改訂版〉』研究社.
4)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
5)茂木透・勝山輝男・太田和夫・崎尾均・高橋秀男・石井英美・城川四郎・中川重年 2000. 『樹に咲く花―離弁花〈1〉 (山渓ハンディ図鑑) 改訂第3版』山と溪谷社.
6)白佐達哉, 比嘉基紀, 神野展光, 薛孝夫 2005. 福岡県におけるアオモジの分布と繁殖生態. 九州森林研究 58:67-70.
7)森本範正. (1990). アオモジ生駒山系に野生化. 植物分類, 地理, 41(4-6), 201-202.
8)大谷雅人, 松下範久, & 鈴木和夫. (2002). 伊豆半島南部の常緑および落葉広葉樹二次林における種組成の分化.
9)中村彰宏. (2005). アオモジ (Litsea cubeba (Lour.) Pers.)(緑化植物ど・こ・ま・で・き・わ・め・る). 日本緑化工学会誌, 30(4), 665.
10)神奈川県植物誌調査会 2018. 『神奈川県植物誌2018電子版』神奈川県植物誌調査会.
編集履歴
2024/1/21 公開