ショウブ Acorus calamus

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宮城県栗原市 2023/5/27
※分布図は目安です。

分布1,2,4):北海道、本州、四国、九州。海外ではアジアと北米に広く分布し、ヨーロッパなど北半球暖帯~温帯域に広く帰化している1,4)。植栽も多く、本来の自生かどうかの判断は困難。

池や湿地に生える多年草。単子葉類で最も古い時代に分岐したとされ、本種とセキショウの2種のみでショウブ目を構成する。近年、ヒゲボソケシキスイの仲間が本種の花粉を媒介することが明らかになっている。

ショウブの概要

花期1)5-7月
希少度★★★(やや稀)
生活形1,2)多年草
生育環境6)湖沼やため池、水路、湿地など
学名3)calamus…アシ(ヨシ)を意味するギリシャ語より

ショウブの形態

宮城県栗原市 2023/5/27

葉は明緑色で長さ50-100㎝1)
冬には葉が枯れる。

宮城県栗原市 2023/5/27

葉の中肋が突出するのが特徴1)
近縁のセキショウはより小型で、中肋がない。
葉先は鋭く尖る。

宮城県栗原市 2023/5/27

花は5-7月、茎の先端に太い棒状の肉穂花序を出す。
花序より上の部分は苞と呼ばれる部分だが、見た目は葉と類似しているため、葉の途中に花序が出ているように見える。
雌性先熟であり5)、先に雌性期となるが目立たない。

東京都練馬区 2022/5/29

雄性期の花序。
花序には多数の花がついており、下から咲き上がる。
近縁のセキショウは花序がより細い。

果実

日本のものは結実率が極めて低いが理由は不明6)

識別

花が咲いていれば、同属のセキショウ以外との識別は容易。
葉のみの場合、アヤメ属と類似するため注意。
アヤメの仲間とは系統的にかなり離れており花の見た目も全く異なるが、呼称が似ているため非常によく混同されており注意が必要。

ショウブとセキショウの識別

ショウブのほうが大型。
花序はショウブのほうが太短く、直径6㎜以上。

ショウブとキショウブの識別

ショウブと同様な環境に生えるアヤメ属として、外来種のキショウブが挙げられる。
キショウブの花は鮮やかな黄色であるため花があれば違いは明確だが、葉のみの場合は似ており注意が必要。

その他の湿地性アヤメ属も花がなければ似ている。
カキツバタは葉に中肋がない。
ノハナショウブは中肋がありよく似ているが、ショウブのほうがより大型になる。
ノハナショウブは葉の長さ30-60㎝、葉幅5-12㎜(ショウブは葉の長さ50-100㎝、葉幅10-20㎜)1)
(ハナショウブはノハナショウブの園芸種である。)

迷った場合、葉をちぎって芳香があれば本種である。

生態

開花特性とポリネーター

Funamoto et al.(2020)は小型のコウチュウであるシベリアユミアシケシキスイSibirhelus corpulentusとシベリアヒゲナガケシキスイPlatamartus jakowlewiが本種の花粉を媒介していることを報告している5)
本種は雌雄先熟で、ポリネーターを排除した場合に結実率が低下した5)
これら2種のヒゲボソケシキスイはショウブの花序で交尾・産卵を行い、ショウブの花序を餌として育つことから、双利的な種間関係(brood-site pollination mutualism)の可能性が示唆されるとしている5)

倍数性

本種には2倍体、3倍体、4倍体が知られており、国内のものは3倍体であるとする文献もあるが(例えば1))、根拠は不明。
ショウブ属には2種のみが含まれるが、4倍体のショウブは単純にセキショウ(2倍体)の染色体が倍加してできたものではなく、異質4倍体と考えられている7)

分類

ショウブの仲間はショウブとセキショウの2種からなり、かつてはサトイモ科に分類されていた1)
その後独立した科とされ、APGIVではショウブ属のみからなるショウブ目として、他のすべての単子葉類と姉妹群を形成するとされている8)

利用

ショウブは芳香成分を含み、香薬として様々な用途に利用されてきた。
茨城県行方市では風呂にショウブの葉を浮かべる「菖蒲湯」用のショウブ栽培が行われている9)
各地で植栽され、自生かどうかの判断は難しい。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林弥栄・門田裕一・平野隆久 2014. 『山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新版』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)POWO (2019). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/ Retrieved2024/3/9.
5)Funamoto, D., Suzuki, T., & Sugiura, S. (2020). Entomophily in Acorus calamus. Ecology101(9), 1-3.
6)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
7)Ma, L., Liu, K. W., Li, Z., Hsiao, Y. Y., Qi, Y., Fu, T., … & Liu, Z. J. (2023). Diploid and tetraploid genomes of Acorus and the evolution of monocots. Nature communications14(1), 3661.
8)The Angiosperm Phylogeny Group 2016. An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV. Botanical Journal of the Linnean Society 181(1): 1-20.
9)大澤啓志. (2015). 行方市北浦地区における在来植物の文化的利用を背景とするショウブ栽培に関する研究. 農村計画学会誌34(Special_Issue), 291-296.

編集履歴

2024/3/9 公開