植物 > 被子植物 > ショウブ目 > ショウブ科 > ショウブ属
分布1,2,5,6):本州、四国、九州。秋田県のRDBにも掲載があり5)、東北以南の各地に分布すると考えられるが、逸出起源との判別は困難と思われる。沖縄にはない?6)。海外では済州島、台湾、中国、東シベリア、インドシナ、ミャンマー、北東インド、フィリピン1)。
水路沿いなどで見られるショウブの仲間。ショウブより小型で常緑の種である。よく栽培され、野外にも逸出しているため本来の自生かどうかの判断が難しい。
セキショウの概要
花期1) | : | 3-5月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形1,2) | : | 多年草 |
生育環境1) | : | 平地から山地にかけての溝や小川の縁など。湧水域では沈水形でも生育する。 |
学名3) | : | gramineus「イネ科植物のような」 |
形態
葉
葉は濃緑色で常緑、長さ30-50㎝2)。
葉は中肋がない1)。
近縁のショウブはより大型で、葉の中央に中肋があり隆起する(識別の項参照)。
葉先は鋭く尖る。
花
花は3-5月、細長い棒状の肉穂花序を出す。
花序より上の部分は苞と呼ばれる部分だが、見た目は葉と類似しているため、葉の途中に花序が出ているように見える。
開花している花序。
花序には多数の花がついており、下から咲き上がる。
雌性先熟で8)、写真のものは上部が雌性期、下部が雄性期である。
雄性期の花序の拡大。
花は3数性で、個々の花は6角形に近い形。
雄性期の花序。
雄しべは6個、雌しべは1個で、目立たないが6枚の花被片が2輪につく1)。
果実
緑色で長さ2.5-3㎜、液果で、成熟すると乾燥して蒴果状となる1)。
ショウブとは異なり、よく結実する4)。
識別
花が咲いていれば、同属のショウブ以外との識別は容易。
ショウブとセキショウの識別
ショウブのほうが大型。
花序はショウブのほうが太短く、直径6㎜以上。
葉の中肋の有無で識別できる。
生態
開花特性とポリネーター
近縁のショウブでは、ヒゲボソケシキスイなどのコウチュウによって花粉が媒介される例が国内で報告されている7)。
本種においても中国広東省でタマバエの一種Contarinia sp.が訪花・産卵した例が報告されており、ポリネーターとして機能していることが考えられる8)。
生育環境
水汲み場の脇にドクダミとともに群生するセキショウ。
人里で見られる個体は逸出起源の可能性がある。
湿地を好み、水路の脇などで見かける機会が多い。
分類
ショウブの仲間はショウブとセキショウの2種からなり、かつてはサトイモ科に分類されていた1)。
その後独立した科とされ、APGIVではショウブ属のみからなるショウブ目として、他のすべての単子葉類と姉妹群を形成するとされている9)。
栽培
全体に小型の、中国原産の園芸品種が栽培される1)。
斑入りの品種も多い。
国内でも矮性のアリスガワゼキショウが作出されている4)。
アクアリウムでは沈水状態で栽培される4)。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林弥栄・門田裕一・平野隆久 2014. 『山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 増補改訂新版』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)角野康郎 2014. 『ネイチャーガイド 日本の水草』文一総合出版.
5)秋田県 2014. 『秋田県の絶滅のおそれのある野生生物 ―秋田県版レッドデータブック2014― 維管束植物』秋田県生活環境部自然保護課.
6)琉球の植物研究グループ 国立科学博物館 2018-.『琉球の植物データベース』 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/project/hotspot_japan/ryukyus/db/ 2024/3/10閲覧.
7)Funamoto, D., Suzuki, T., & Sugiura, S. (2020). Entomophily in Acorus calamus. Ecology, 101(9), 1-3.
8)Bogner, J. (2011). Acoraceae. Flora Malesiana-Series 1, Spermatophyta, 20(1), 1-13.
9)The Angiosperm Phylogeny Group 2016. An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV. Botanical Journal of the Linnean Society 181(1): 1-20.
編集履歴
2024/3/10 公開