シキミ Illicium anisatum

植物 > 被子植物 > アウストロバイレヤ目 > マツブサ科 > シキミ属

兵庫県篠山市 2014/3/31
※分布図は目安です。

分布1,4):本州(宮城県以南)、四国、九州、琉球(沖縄諸島以北)。国外では済州島。

葉をちぎると強い香りがする常緑樹。被子植物の中では原始的な部類に入る。果実は香辛料の八角に似ているが、アニサチンという毒を含んでおり食べられない。寺社や墓地などに植えられることも多く、目にする機会の多い植物である。

シキミの概要

花期1)3-5月
希少度★★(普通)
大きさ1)2-5(10)m
生活形常緑小高木
生育環境2)山地寄りのカシ林やモミ・ツガ林内
学名3)anisatus「アニスの香りがする」
和名1)「悪しき実」より転じたといわれる

シキミの形態

大阪府茨木市 2014/2/22

葉は長さ5-11㎝2)、鋸歯はない。
葉先寄りが最も太くなる。
ちぎると甘い香りがするのが大きな特徴。

大阪府茨木市 2014/2/22

表裏とも葉脈はあまり目立たない。

大阪府茨木市 2014/2/22

幼木。葉は枝先に集まってつく。

兵庫県篠山市 2014/3/31

縁は時にやや波打つ。

大阪府茨木市 2014/2/26

幼木。
特徴に乏しいので初めのうちは難しいが、葉脈の見え方や光沢感が独特で慣れると見分けやすい。

静岡市葵区 2014/1/2

虫こぶ(シキミハコブフシ)。
シキミタマバエの仲間によって形成されるもので、本州~屋久島で見られる5)
作者がごく初心者の頃、これがついていることがシキミを見分けるよい目印になった。

大阪府茨木市 2014/2/22

冬芽は小型。

岡山県美作市 2016/3/19

花は直径2.5-3㎝。
花被片はふつう黄白色で(12)16-24(28)枚1)

岡山県美作市 2016/3/19

雄しべは15-28本、雌しべはふつう8個の心皮よりなる1)

岡山県美作市 2016/3/19

花は早春、葉腋につく。

果実

滋賀県大津市 2014/8/2

果実は8角形、突起がある。

滋賀県大津市 2014/8/2

同属の中国~ベトナム原産のトウシキミの果実(香辛料の八角)とよく似た形。
アニサチンを含み猛毒。「しきみの実」として劇物に指定されている7)

樹皮

兵庫県篠山市 2014/3/31

樹皮は暗褐色でやや平滑、縦筋が入る1,2)

シキミの生育環境

大阪府高槻市 2014/7/21

カシ林やモミ・ツガ林の林床でよく見られる。
本種はアニサチンという毒素を有し、ニホンジカの忌避植物であるため6)、シカの多い地域においても残りやすい傾向にある。

また、寺社や墓地でよく植栽される2)

シキミの種内変異

沖縄諸島のものは葉が細く、変種オキナワシキミvar. masa-ogataeとされることがあるが、奄美諸島のものは中間的で、明瞭に区別できない4)

また、花被片の色が淡紅色のものを品種ウスベニシキミf. roseumと呼ぶ。

識別

ヤエヤマシキミとの識別

同属のヤエヤマシキミは石垣島、西表島にあり、分布が重ならない。
花被片が白く、心皮の数が多いのが違いである。葉はよく似る。

シキミヤエヤマシキミ
葉の長さ4)5-12㎝6-14㎝
花被片の色1,4)ふつう黄白色ふつう白色
雌しべ(心皮)の数1)(7)8(-10)個11-13個
シキミとヤエヤマシキミの相違点

その他常緑樹との識別

鋸歯がなく、表裏の葉脈が目立たないその他の常緑樹とは、慣れるまでは間違えやすい。
分類的には離れているが、やや似ているものにモチノキ、サカキ、ミヤマシキミ、タブノキなどがある。

モチノキは葉がやや小型で、葉柄が時に紫色となり、枝に稜がある。ちぎっても香りはしない。

サカキは葉が枝先に集まってつくことはなく、冬芽が鎌型で目立ち、ちぎっても香りはしない。

ミヤマシキミはミカン科で、ちぎるとシキミとは違う柑橘系の香りがする。樹形は地を這い高さ1m程度まで。葉はシキミにやや似るが、葉先にしばしば目立たない小さな鋸歯がある。また、葉表はシキミほど光沢がなく、表面がややざらざらして見えることが多い。

タブノキは葉形が似るが、冬芽が大きく目立つ。また、葉裏は白みを帯びて大きく印象が異なる(シキミは緑色)。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
5)湯川淳一・桝田長 1996. 『日本原色虫えい図鑑』全国農村教育協会.
6)高槻成紀 1989. 植物および群落に及ぼすシカの影響. 日本生態学会誌 39(1): 67-80.
7)国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部 『毒物及び劇物取締法(毒劇法)』 http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/dokugeki.html. 2021/7/14閲覧.

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2021/7/14 公開