オオヤマレンゲ Magnolia sieboldii subsp. japonica

植物 > 被子植物 > モクレン目 > モクレン科 > モクレン属

福岡県 2021/6/6
※分布図は目安です。

分布1,4,5):本州(関東北部以西)、四国、九州。南限は屋久島。国外の分布については「亜種について」の項を参照。

「森の貴婦人」と呼び声の高い希少なモクレンの仲間。庭などによく植えられるものは別亜種のオオバオオヤマレンゲであり、雄しべの色などが異なる。

オオヤマレンゲの概要

花期1)5-7月
希少度★★★★(稀)
生活形落葉小高木~低木
大きさ1)高さ4-5mまで
生育環境1,4)冷温帯~亜寒帯、標高1000-2000mの山地
学名2)sieboldii:シーボルトへの献名

オオヤマレンゲの形態

福岡県 2021/6/6

葉は長さ7-15㎝3)、幅広くずんぐりした印象。
ふつうやや先寄りで幅広い(倒卵形)。

福岡県 2021/6/6

同じ株の葉。先は短く尖る。

福岡県 2021/6/6

葉裏は白みを帯びる。

福岡県 2021/6/6

葉裏、葉柄は有毛。
なお、ホオノキとの雑種ウケザキオオヤマレンゲではほぼ無毛になる3)

福岡県 2021/6/6

花は直径5-10㎝、横向き~下向きに咲く1)
花被片はふつう9枚。
外側の3枚は小型で赤色を帯び、しばしば萼片と呼ばれる1)

福岡県 2021/6/6

蕾。

福岡県 2021/6/6

咲き終わって萎れた花。

樹皮

福岡県 2021/6/6

樹皮は灰白色、なめらかで皮目が大きい6)

亜種について

オオヤマレンゲは国内にも分布する亜種オオヤマレンゲsubsp. japonicaと、
もう1亜種オオバオオヤマレンゲsubsp. sieboldiiの2亜種に分けられている。

身近に植えられているのはオオバオオヤマレンゲ

オオバオオヤマレンゲは日本には分布しないが、しばしば庭園などに植えられている3)
一方の亜種オオヤマレンゲは高標高地に適応しており、低地ではうまく育たないという4)

オオバオオヤマレンゲの大きな特徴として、葉が大きいこと、雄しべが赤紫色であることが挙げられる。

オオヤマレンゲオオバオオヤマレンゲ
分布日本、中国南部朝鮮半島、中国東北部
葉身長(5)7-12(15)㎝(10)12-17(20)㎝
葉柄有毛~時に無毛に近い毛が密生する
雄しべ淡黄緑色~黄白色赤紫色
標高1000-2000m100-1500m
オオヤマレンゲ2亜種のおもな特徴4)

両亜種の分布図についてはKikuchi and Osone 20214)に示されているので参照されたい。

識別

モクレン属の他種との識別(自生種)

国内には本種を含めて8種のモクレン属が記録されている(一覧はこちら)。
いずれも葉の形状や大きさが異なるため識別は難しくない。

モクレン属の他種との識別(外国産種)

植栽されるハクモクレンは葉の形がやや似るが、葉裏は白くならず、花は葉が出るより先に咲く。

ウケザキオオヤマレンゲについて

ホオノキとの雑種であるウケザキオオヤマレンゲM. x wieseneriが時に栽培される3)
葉は両種の中間的となり、花は上を向いて咲く。

オオバオオヤマレンゲについて

上記「亜種について」の項を参照。雄しべの色や葉の大きさが異なる。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
4)Ueda K. 1980. Taxonomic study of Magnolia sieboldii C. Koch. Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 31(4-6):117-126.
5)Kikuchi S., Osone Y. 2021. Subspecies divergence and pronounced phylogenetic incongruence in the East-Asia-endemic shrub Magnolia sieboldii. Annals of Botany 127:75-90.
6)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.

編集履歴

2022/2/12 公開