植物 > 被子植物 > モクレン目 > モクレン科 > モクレン属
分布1,3):本州(関東以西の太平洋側)、四国、九州、奄美諸島、沖縄諸島。日本固有。タイワンオガタマノキは同種とされることもあり、石垣島・西表島・与那国島と台湾に分布する。
暖温帯~亜熱帯に分布する常緑のモクレンの仲間。関東~沖縄に自生するほか、各地の神社などに植えられる。枝を一周する托葉痕や、褐色の毛に覆われた冬芽が特徴。
オガタマノキの概要
花期1) | : | 2-4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 常緑高木 |
大きさ1) | : | 大きなものは樹高15m、幹径80㎝ |
生育環境 | : | 暖地~亜熱帯の山地、海沿いの照葉樹林など。神社などに植栽される。 |
学名2) | : | compressus:「圧縮された、扁平な」 |
オガタマノキの形態
葉
葉は葉身長5-14㎝で全縁、互生する1)。
先寄りで幅が最大になるのが大きな特徴。
葉裏は白色を帯びる。
葉先は鈍頭~鋭く尖る。
林床の幼木の葉裏。
枝と冬芽
葉柄は基部付近でふくらむ。
冬芽は光沢のある褐色の毛に覆われる4)。
枝ははじめ毛があるがのちに無毛4)。
モクレン属に共通する特徴として、葉柄の付け根に枝を一周する托葉痕があることが挙げられる。
この托葉痕はイチジク属にもみられ、識別の手掛かりになる。
花
花は直径約3㎝、芳香があり、ふつう12枚の花被片をもつ1)。
花被片の基部は紫紅色を帯びる(タイワンオガタマノキは全体が黄白色)。
樹皮
樹皮は暗褐色で平滑4)。
幼木
林床では幼木をよく見かける。
鳥散布種子のため5)、植栽のものが広がっている可能性もあると考えられる。
幼木でも葉形や托葉痕、冬芽の形などを確認すれば同定は難しくない。
識別
モクレン属の他種との識別
国内には本種を含めて8種のモクレン属が自生するが、常緑樹は本種とタイワンオガタマノキのみである。
また、植栽される外国産の常緑のものにカラタネオガタマ、タイサンボクがあり、ヒメタイサンボクやミヤマガンショウも稀に植えられる。
タイワンオガタマノキは本種の変種とされることもあり(その場合自生種は7種)、国内では八重山諸島にのみ分布する。オガタマノキとは分布が重ならず、花は花被片が全体黄白色で基部が紫色にならない。
カラタネオガタマは中国原産で、葉がやや小さく太短い傾向があり、葉柄が3㎜以下とごく短い4)。枝やけに濃い褐色の剛毛が多い点、花が赤色を帯びた黄白色でバナナに似た強い香りがある点なども異なる。
タイサンボクは葉が15-25㎝、花も直径25㎝に達し、明らかに大きいため見分けやすい。葉裏に褐色の毛が密生するのもよい特徴。葉身の質は硬く表面には光沢がある。
ヒメタイサンボクは公園樹に稀で、葉色の薄い半常緑樹。葉裏は明らかに白い。葉の最大幅はほぼ中央で、葉身の形はタイサンボクに似るが、葉身長は8-18㎝とタイサンボクより小さい。葉裏や葉柄は有毛。花はタイサンボクに似た形で小型。
ミヤマガンショウM. maudiaeは稀に植栽される常緑樹で、葉身の形はヒメタイサンボクに似るがオガタマノキに近縁。葉裏はヒメタイサンボクと同様に白みを帯びるが6)、葉は全体無毛で葉色が濃く、花はオガタマノキに近い形で、花被片は全体白色。
オガタマノキの分類
オガタマノキやタイワンオガタマノキ、カラタネオガタマ、ミヤマガンショウなどはオガタマノキ属Micheliaとされることもあるが、いまではモクレン属に含める考え方が一般的である。
また、タイワンオガタマノキは本サイトでは別種としているが、オガタマノキの変種とされることもある。
その場合のタイワンオガタマノキの学名はMagnolia compressa var. formosanaとなる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)琉球の植物研究グループ 国立科学博物館 2018-.『琉球の植物データベース』 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/project/hotspot_japan/ryukyus/db/ 2021/8/27閲覧.
4)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
5)平田令子, 畑邦彦, 曽根晃一 2006. 果実食性鳥類による針葉樹人工林への種子散布.
日本森林学会誌 88(6):515-524.
6)Missouri Botanical Garden, Harvard University Herbaria 2008. 『Flora of China Volume 7』 http://www.efloras.org 2021/8/29閲覧.
編集履歴
2021/8/31 公開