ホオノキ Magnolia obovata

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岐阜県関ケ原町 2018/5/19
※分布図は目安です。

分布1,4):北海道~九州。温帯~暖帯の上部。

日本最大級の葉が特徴的なモクレンの仲間。花も大型でよく目立つ。慣れないうちはトチノキと間違えやすいので注意して観察しよう。

ホオノキの概要

花期1)5-6月
希少度★★(普通)
生活形落葉高木
大きさ1)大きなものは樹高30m、径1m以上
生育環境3)山地~丘陵の林内。寒地に多い。
学名2)obovatus「倒卵形の」

ホオノキの形態

福岡県添田町 2021/6/6

葉は長さ25-45㎝3)、単葉では日本最大級。
学名(種小名)にあるように倒卵形(先寄りで幅広い)。
互生で枝先に集まってつく。

大阪府茨木市 2014/2/20

葉裏は白い。

大阪府茨木市 2013/12/14

落ち葉でも葉裏の白色がよく目立つ。
大きさもあいまって非常に目につきやすい葉である。

岐阜県高山市 2014/9/20

白っぽく見えるのが本種。
遠くからでも葉裏の白色がよく目立つことがある。

岐阜県関ケ原町 2018/5/19

花は直径15㎝ほどで大きく、枝先に上向きに咲く1)
花被片は9-12枚。外側の3枚は小型・淡緑色で、しばしば萼片と呼ばれる1)

福岡県添田町 2021/6/6

花はややまばらにつくが、大きいため遠くからでも目立つ。

果実

岐阜県高山市 2014/9/20

果実は集合果で長さ10-15㎝、多数の袋果を密につける1)
1つの袋果にはふつう2個の赤い種子がある1)

芽鱗

長野県大町市 2015/5/3

モクレン科の冬芽は1枚1枚の葉が「芽鱗」と呼ばれるものに覆われている5)
この写真はもっとも外側の芽鱗。

長野県大町市 2015/5/3

内側。
芽鱗は2枚の托葉が合着してできており、基部がさらに葉柄の付け根と合着している。
写真でも葉柄と合着していた跡が見て取れる。

長野県大町市 2015/5/3

春先の展葉。
それぞれの葉の付け根に芽鱗(托葉)が見て取れる。
この托葉はすぐに落ち、落ちた跡はモクレン属の特徴として有名な「托葉痕」となる。

樹皮

大阪府高槻市 2013/9/28

樹皮は灰白色でなめらか6)

大阪府茨木市 2014/5/6

別個体。

大阪府茨木市 2014/5/6

地衣類の付着したもの。

幼木

大阪府茨木市 2014/5/6

幼木でも大きな葉が特徴的でわかりやすい。

朴葉味噌

岐阜県高山市 2014/9/22

ホオノキの大きな葉は古くから食物を乗せる用途に用いられてきた1)
飛騨高山地方では味噌を使った朴葉味噌と呼ばれる料理が特産品となっている。

識別

モクレン属の他種との識別(自生種)

国内には本種を含めて8種のモクレン属が記録されている(一覧はこちら)。
いずれも葉の長さはふつう20㎝を超えず、葉裏もホオノキほどはっきりと白くならないため識別は難しくない。

モクレン属の他種との識別(外国産種)

植栽されるハクモクレンは葉の形がやや似るが、葉の長さは20㎝程度までで葉裏は白くならない。

トチノキとの識別

ホオノキは単葉であるが、枝先に葉が集まるためトチノキと似て見えることがある。
トチノキは複数の小葉が放射状に集まって1枚の葉を形成している掌状複葉で、葉が1つ1つ分離してつくホオノキとは葉の構造が大きく異なる。
ホオノキが全縁(葉の縁がなめらか)なのに対して鋸歯もあるため、慣れれば見わけは難しくない。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
4)田中信行・松井哲哉 (2007-) PRDB:植物社会学ルルベデータベース, 森林総合研究所.
URL: http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html 2022/1/3閲覧.
5)広沢毅・林将之 2010. 『冬芽ハンドブック』文一総合出版.
6)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.

編集履歴

2022/1/3 公開