アスナロ Thujopsis dolabrata

植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > ヒノキ科 > アスナロ属

岐阜県高山市 2014/9/22

分布4):北海道(渡島半島)、本州、四国、九州(~鹿児島県)。日本固有種。

冷涼な山地に生える日本固有のヒノキの仲間。国内のこの仲間では最も大きな鱗状の葉を持ち、葉裏の白色も特徴的で覚えやすい。ヒノキと異なり、植林されることは少ない。

アスナロの概要

花期1)5月
希少度★★★(やや稀)
大きさ1)高さ約30m
生活形1)常緑高木
生育環境2)冷温帯の山地
和名1)ヒノキよりも材質が劣るため「明日ヒノキになろう」に由来するとする説がある。
学名3)dolabratus「手斧のような形をした」

アスナロの形態

岐阜県高山市 2014/9/21

ヒノキなどと同じく、鱗のような葉(鱗状葉)が密に連なっている。

岐阜県高山市 2014/9/20

鱗状葉は近似種中最も大きく、長さ5㎜前後。

岐阜県高山市 2014/9/20

葉裏の白い部分(気孔帯)は幅広く、非常に目立つ。

樹皮

熊本県水上村 2020/3/20

樹皮は灰褐色で縦に裂ける。

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。

アスナロとヒノキ、サワラ、ネズコの識別

ヒノキ:Y
サワラ:H(X)
アスナロ:W

葉裏の気孔帯(白い部分)を見ると分かりやすい。ヒノキはY、サワラはH(またはX)、アスナロはWに例えられる形をしている。
また、ネズコ(クロベ)はヒノキを太くしたような葉をしており、気孔帯が薄く目立たない。
アスナロは他3種に比べ鱗状葉が大きいため一見して区別できる。

ヒノキサワラアスナロネズコ
属名ヒノキ属ヒノキ属アスナロ属ネズコ属
分布本・四・九本・九本・四・九本・四
葉裏の気孔帯Y字型で細いH(X)字型で太いW字型で太い緑白色で不明瞭

アスナロの種内変異(変種ヒノキアスナロ)

アスナロには基変種アスナロvar. dolabrataと変種ヒノキアスナロvar. hondaeの2変種があり、分布が北(ヒノキアスナロ)と南(アスナロ)に分かれている。
分布の接する地域では形態が連続的に変化し、しばしば見分けが難しいという4)
両変種の詳細は以下の表のとおり。詳細についてはInanaga et al.(2020)4)を参照。

アスナロヒノキアスナロ
分布岩手県~鹿児島県北海道渡島半島~中部地方
球果(松ぼっくり)角張る丸い
大型やや小型で密につく

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)Inanaga M., Hasegawa Y, Mishima K., Takata K. 2020. Genetic Diversity and Structure of Japanese Endemic Genus Thujopsis (Cupressaceae) Using EST-SSR Markers. Forests 11(9): 935.

編集履歴

2021/7/1 公開