アリマウマノスズクサ Aristolochia shimadae

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沖縄県石垣島 2015/3/7
※分布図は目安です。

分布1,2,3):兵庫(六甲山系)、九州(長崎、佐賀、熊本)、久米島、八重山諸島。国外では台湾。オオバウマノスズクサとの混同が見られるため注意。

本土でオオバウマノスズクサと混同されてきたウマノスズクサの仲間。琉球の久米島以南で多く見られるが、兵庫県や九州の一部にも分布している。花は紫色と黄色のコントラストが特徴的である。

アリマウマノスズクサの概要

花期1)5-6月
希少度★★(琉球では普通)
生活形常緑~落葉性のつる性木本
巻き方2,3)Z巻き(右上)
生育環境3)低地~山地の林縁

アリマウマノスズクサの形態

沖縄県石垣島 2015/3/6

葉は丸いハート型で長さ6-15㎝3)
本土産のものは基部で3裂する細長い葉が多いが、琉球のものはすべて裂けない葉をしている。

沖縄県石垣島 2015/3/6

葉裏は短い軟毛が密生する。
葉脈は細かいものまで浮き上がる。

沖縄県石垣島 2015/3/6

葉柄にも短い軟毛が密生する。

沖縄県石垣島 2015/3/6

リュウキュウウマノスズクサやオオバウマノスズクサとは葉だけでの識別は難しい。

果実

沖縄県石垣島 2015/3/7

果実は長楕円形、6本の稜がある。

識別

日本産ウマノスズクサ属7種のうち、ウマノスズクサ亜属の3種(ウマノスズクサコウシュンウマノスズクサマルバウマノスズクサ)は草本で、葉は表裏とも無毛であることなどから簡単に除外できる。

オオバウマノスズクサ亜属のうち、本種を除く以下の3種については、葉だけでの区別は困難である。
タンザワウマノスズクサリュウキュウウマノスズクサは本種と分布が異なる(属のページ参照)。
オオバウマノスズクサは本種としばしば分布が重なり、混同されてきた。
これらの種の花の形態、および分類の歴史については渡邊・大井(2016)4)に詳しい。

オオバウマノスズクサとの識別

本種(アリマウマノスズクサ)の花はふつう舷部が全体濃紫褐色、筒口内部は黄色で無紋で、境界がはっきりしている。
また、筒口の縁が突出するのも大きな特徴である。

一方、オオバウマノスズクサの花はふつう舷部が黄緑色で赤紫色~濃紫色の条紋があり、筒口内部も黄緑色で同様に濃紫色の斑紋が密に入る。ただし、まれに舷部が全体濃紫褐色やクリーム色のもの、筒口内部が紫褐色で斑紋がないものなどもあるため注意が必要である4)

なお、佐賀県ではアリマウマノスズクサとオオバウマノスズクサとの雑種と考えられるものが時に見られる4)

アオツヅラフジとの識別

ツヅラフジ科のアオツヅラフジは北海道~先島諸島に分布し、葉は広卵形~3裂するものまでありやや似ている。
葉のサイズはアリマウマノスズクサより小さく、葉身基部があまり湾入せず、葉裏の葉脈があまり浮き上がらないことなどから識別できる。

ミヤコジマツヅラフジとの識別

ツヅラフジ科のミヤコジマツヅラフジは紀伊半島~先島諸島に分布し、やや葉が似るが、葉柄が盾状につくことなどから識別できる。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
4)渡邉-東馬加奈, 大井-東馬哲雄 2016. 日本産オオバウマノスズクサ群の分類学史およびオオバウマノスズクサとアリマウマノスズクサの混同について. 分類 16(2):115-129.

編集履歴

2021/7/18 公開