リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis

昆虫 > トンボ目 > モノサシトンボ科 > ルリモントンボ属

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2020/11/1
※分布図は目安です。

分布1,2):奄美群島、沖縄諸島。日本固有種。

奄美~沖縄の山地の渓流域に見られるモノサシトンボの仲間。奄美産と沖縄産では体色が異なり、奄美産はアマミルリモントンボとして別亜種とされている。

リュウキュウルリモントンボの概要

出現時期3)3月下旬-12月上旬。
希少度★★(普通)
全長1)オス44-55㎜、メス43-52㎜
生息環境山間の森林に囲まれた渓流域2)。緩やかな流水、流れの脇の水たまりなど1)。幼虫は沈積物の多い淵や川沿いの水たまり、林道の轍跡の水たまりなどに生息する2)

リュウキュウルリモントンボの形態

オス

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2020/11/1

オスは成熟に伴い体色が青く変化する1)
未熟個体はメスと同様の黄色である。
亜種リュウキュウルリモントンボの腹端は黄色。

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2017/8/18

オス(別個体)。
亜種リュウキュウルリモントンボの成熟オスは前肩条が下半部のみを残し消失する。

メス

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2020/11/1

交尾中のメス(下)。
メスは黄色のまま成熟する個体と、オスに似た体色になる個体(オス型)がいる1)

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2017/8/18

オス型メス。
オスに似るが腹端の形状などが異なる。
亜種リュウキュウルリモントンボにおいては胸部の斑紋も雌雄で異なっており、成熟オスでは前肩条が下半部のみで短いのに対し、メスでは体色を問わず前肩条が長い。

幼虫(ヤゴ)

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2020/11/1

幼虫(ヤゴ)は沈積物の多い淵や川沿いの水たまりなどに生息する。
モノサシトンボ属やグンバイトンボ属と異なり、尾鰓が体長より明らかに短い2)
脚には環状紋が目立つ1)

識別

同所的に似た種はおらず識別は容易。
石垣島と西表島には同属の別種マサキルリモントンボが分布する。
マサキルリモントンボは胸部の斑紋が異なり、成熟しても胸部が通常青くならない。

リュウキュウルリモントンボの生態

繁殖行動

亜種リュウキュウルリモントンボ 沖縄県国頭村 2020/11/1

オスは水辺にとまって縄張りを持つ。
交尾後は連結態のまま、湿地に堆積した落葉やコケなどに産卵する1,3)
メスは単独産卵を行うこともある3)

分類

亜種について

本種には形態の異なる2亜種が認められている。

亜種アマミルリモントンボ

奄美大島から徳之島にかけて分布する1,2)
成熟オスの腹端は青色、メスの腹端は黒色1)
成熟オスの前肩条は長いまま5)

亜種リュウキュウルリモントンボ

沖縄諸島に分布する1,2)
腹端は雌雄ともに黄色1)
成熟オスの前肩条は下半部のみとなり、未熟時やメスと比較して短くなる3,5)
ただし、前肩条の上端が分離して残る個体も一部に見られる(伊平屋型;沖縄島にも稀にいる)など、変異がある。
渡嘉敷島には前肩条が消失する黒化型が少数見られる5)
伊平屋島、慶良間諸島の個体群は絶滅が危惧されている3,5)

種分化について

ルリモントンボ属の種分化について調べた研究では、近縁のモノサシトンボ属と比較して遺伝的多様性が高く、地理的分断による種分化が起きやすかったとの結果が出ている4)
この理由としてルリモントンボ属は流水性、モノサシトンボ属は止水性という生態面の違いが関係しているのではないかと考察されている4)

文献

1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
3)尾園暁・渡辺賢一・焼田理一郎・小浜継雄 2007. 『沖縄のトンボ図鑑』いかだ社.
4)Osozawa, S., Sato, F., & Wakabayashi, J. (2017). Quaternary vicariance of lotic Coeliccia in the Ryukyu-Taiwan islands contrasted with lentic Copera. Journal of Heredity108(3), 280-287.
5)沖縄県 2017. 『レッドデータおきなわ 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編)』

編集履歴

2024/3/14 公開
2024/3/18 レイアウトを修正