昆虫 > トンボ目 > モノサシトンボ科 > ルリモントンボ属
分布1,2):石垣島、西表島。日本固有亜種。海外では台湾に基亜種が分布する。
石垣島と西表島の渓流で見られるモノサシトンボの仲間。ルリモントンボの名があるが、本種は通常青くならない。台湾南部に分布するタイワンルリモントンボの亜種とされている。
マサキルリモントンボの概要
出現時期3) | : | 3月上旬-12月上旬。 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
全長1) | : | オス44-51㎜、メス41-49㎜ |
生息環境 | : | 山間の森林に囲まれた渓流域2)。緩やかな流れ、小さな水たまりなど3)。幼虫は沈積物の多い淵や川沿いの水たまり、林道の轍跡の水たまりなどに生息する2)。 |
形態
オス
成熟に伴う体色変化は少ないが、稀に青色型と呼ばれる青みの強い個体が現れる1,3)。
メス
メスもオスとよく似る。
腹端が太いことなどでオスと識別できる。
識別
同所的に似た種はおらず識別は容易。
奄美~沖縄には同属の別種リュウキュウルリモントンボが分布する。
リュウキュウルリモントンボは胸部の斑紋が異なるほか、成熟オスやオス型メスでは胸部が青くなる。
生態
繁殖行動
オスは水辺にとまって縄張りを持つ。
交尾後は連結態のまま、湿地に堆積した落葉やコケ、朽木などに産卵する1,3)。
メスは単独産卵を行うこともある1,3)。
分類
亜種について
マサキルリモントンボは台湾南部に分布するタイワンルリモントンボCoeliccia flavicaudaの亜種masakiiとして分類されている1,4)。
台湾に分布する基亜種はより大型で胸部の斑紋が異なる1)。
基亜種とマサキルリモントンボの2亜種のみが認められている。
なお、台湾北部にはもう1種、中国本土と同じCoeliccia cyanomelasが分布している4)。
種分化について
ルリモントンボ属の種分化について調べた研究では、近縁のモノサシトンボ属と比較して遺伝的多様性が高く、地理的分断による種分化が起きやすかったとの結果が出ている4)。
この理由としてルリモントンボ属は流水性、モノサシトンボ属は止水性という生態面の違いが関係しているのではないかと考察されている4)。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
3)尾園暁・渡辺賢一・焼田理一郎・小浜継雄 2007. 『沖縄のトンボ図鑑』いかだ社.
4)Osozawa, S., Sato, F., & Wakabayashi, J. (2017). Quaternary vicariance of lotic Coeliccia in the Ryukyu-Taiwan islands contrasted with lentic Copera. Journal of Heredity, 108(3), 280-287.
編集履歴
2024/3/9 公開