昆虫 > トンボ目 > アオイトトンボ科 > アオイトトンボ属
分布1,2):本州~九州。青森県から鹿児島県まで広く分布するが、生息地は局所的で絶滅した地域も多い。国外では朝鮮半島、中国、ロシア(極東)。
産地の限られるアオイトトンボの仲間。近年激減しており、見られなくなった地域も多い。柔らかい抽水植物にしか産卵できないことが、本種の減少の一因と考えられている。
コバネアオイトトンボの概要
出現時期1,2) | : | 夏~晩秋。近畿では8月下旬から10月中旬に多い2)。卵越冬。 |
希少度 | : | ★★★★(稀) |
全長1) | : | オス39-44㎜、メス38-43㎜ |
生息環境 | : | 平地や丘陵地のクログワイやヒメホタルイ、ヒメガマ等比較的柔らかい組織を持つ抽水植物が繁茂する池沼や湿地3)。羽化場所から離れた場所へはあまり移動しない2)。 |
産卵1,2) | : | 主に午後、連結態(時に単独)で水辺の抽水植物に産卵する。 |
コバネアオイトトンボの形態
オス
オスは成熟すると複眼が青色に、胸部の地色が水色に変わる2)。
アオイトトンボのように胸部に白い粉を帯びることはない。
オス(同一個体)。
成熟すると腹部第9節・第10節が白い粉を帯びる。
オスの腹端(同一個体)。
尾部下付属器が短く目立たないのが特徴。
メス
メスの胸部の地色は成熟すると黄白色~淡緑色になる。
産卵管に黒色部がほぼないことも特徴1)。
メス(別個体)。
識別
同所的にはアオイトトンボ、オオアオイトトンボが分布し、やや似ている。
通常は胸部の色彩から明瞭に識別できる。
正確にはオスの尾部付属器、メスの産卵管を確認する。
全国的な減少
本種はもともと産地が局限されるうえ、全国的に激減しており消滅した産地も多い1)。
産地が限られる要因として、本属4種中で本種が最も産卵管を動かす筋肉の発達が悪く、組織の柔らかい植物にしか産卵できないことが指摘されている3)。
近年になってそのような抽水植物の繁茂する良好な湿地環境が減少していることが、本種の減少につながっているものと考えられる。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)山本哲央・新村捷介・宮崎俊行・西浦信明 2009. 『近畿のトンボ図鑑』いかだ社.
3)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
編集履歴
2023/12/13 公開