エゾトンボ科の概要
不均翅亜目の科の一つ。
オセアニアモリトンボ科、ヤマトンボ科、トンボ科と共にトンボ上科Libelluloideaを構成する2)。
世界に22属166種、日本に4属13種が分布している3)。
エゾトンボ科掲載種一覧
日本産13種のうち7種を掲載。
カラカネトンボ属 Cordulia
カラカネトンボ C. amurensis
北海道~北陸に分布。
エゾトンボ属の各種と似るが、オスでは尾部上付属器が短いことで区別できる1)。
また、メスでは産卵弁が下に突出しないことで区別できる1)。
(エゾトンボ属のメスの産卵弁は下方に多少なり突出する。)
トラフトンボ属 Epitheca
トラフトンボ E. marginata
東北~九州に分布。
オオトラフトンボにやや似るが、斑紋で区別可能。
また本種のメスは翅の前縁が黒くなる個体が多いが、オオトラフトンボでは黒くならない。
オオトラフトンボ E. bimaculata
北海道~信越に分布。
後翅基部にトラフトンボにはない黒色斑がある。
エゾトンボ属 Somatochlora
ホソミモリトンボ S. arctica
北海道と中部地方の高層湿原に分布。
オスは尾部上付属器が上から見てくぎぬき型をしている1)。
メスは産卵弁が舌状で明色、腹部第3節背面に円形の黄色斑がある1)。
タカネトンボ S. uchidai
北海道~九州に分布。
オスは尾部上付属器が特に長く、尾部上付属器下面が顕著に段差状になる1)。
モリトンボのオスとは尾部付属器の形状を含め極めてよく似るが、本種のほうが尾部上付属器が長い。
メスは産卵弁が小さく下方に突出する。
メスもモリトンボと酷似するが、腹部第3節の黄色斑が三角形に近い1)。
モリトンボ S. graeseri
北海道~青森県に分布。
写真のように翅の基部が黄色いものが多く、亜種キバネモリトンボとされている。
大雪山周辺や知床半島には翅が無色のもの(亜種モリトンボ)が分布し、タカネトンボと酷似する4)。
またキバネモリトンボとモリトンボは時に混生し中間型もあるため、亜種としての有効性が疑問視されている。
尾部付属器、産卵弁の形状はタカネトンボに似る。
コエゾトンボ S. exuberata
北海道に分布する。
また、基亜種チョウセンエゾトンボが山梨県、長野県で少なくとも2例記録されている。
オスは尾部上付属器を上から見ると外側が角張っている1)。
尾部付属器はクモマエゾトンボに似るが、本種のほうが大きく、胸部の毛が少ない。
メスは産卵弁が下方に長く突出する点でエゾトンボ、ハネビロエゾトンボに似るが、エゾトンボのような腹部第4節以降の黄色斑がなく、ハネビロエゾトンボのような胸部の黄斑もない1)。
日本産エゾトンボ科一覧
4属13種が分布している。
属名 | 種名1) | 国内分布1) |
---|---|---|
ミナミトンボ属 | オガサワラトンボ Hemicordulia ogasawarensis | 小笠原(固有) |
ミナミトンボ Hemicordulia mindana | 種子島、石垣島、西表島 | |
リュウキュウトンボ Hemicordulia okinawensis | 中之島、奄美大島、沖縄島(固有) | |
カラカネトンボ属 | カラカネトンボ Cordulia amurensis | 北海道~北陸 |
トラフトンボ属 | トラフトンボ Epitheca marginata | 東北~九州 |
オオトラフトンボ Epitheca bimaculata | 北海道~信越 | |
エゾトンボ属 | ホソミモリトンボ Somatochlora arctica | 北海道、中部 |
クモマエゾトンボ Somatochlora alpestris | 北海道 | |
タカネトンボ Somatochlora uchidai | 北海道~九州 | |
モリトンボ Somatochlora graeseri (亜種キバネモリトンボを含む) | 北海道、青森 | |
エゾトンボ Somatochlora viridiaenea | 北海道~九州 | |
ハネビロエゾトンボ Somatochlora clavata | 北海道~九州 | |
コエゾトンボ Somatochlora exuberata (亜種チョウセンエゾトンボを含む) | 北海道、(山梨、長野) |
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)Bybee S. M., Kalkman V. J., Erickson R. J., Frandsen P. B., Breinholt J. W., Suvorov A. et al. 2021. Phylogeny and classification of Odonata using targeted genomics. Molecular Phylogenetics and Evolution 160:107115.
3)Paulson D., Schorr M., Deliry C 2022. 『World Odonata List 20220526』https://www2.pugetsound.edu/academics/academic-resources/slater-museum/biodiversity-resources/dragonflies/world-odonata-list2/ 2022/6/10閲覧.
4)広瀬良宏・伊藤智・横山透 2007. 『北海道のトンボ図鑑』いかだ社.
編集履歴
2022/8/12 公開