分布1,2):北海道~中部地方。関東、中部の分布は日本海側に限られる。国外では朝鮮半島、ロシア。
北日本に分布するイトトンボの仲間で、分布域では比較的普通に見られる。オスでは腹部の斑紋が識別のポイントになる。メスにはオスに似て青色になるものと、緑色のままのものの2タイプがある。
エゾイトトンボの概要
出現時期 | : | 4月下旬-7月上旬に多い1)。 |
希少度 | : | ★★(普通) |
全長1) | : | オス30-39㎜、メス30-40㎜ |
生息環境1,2) | : | 寒冷な地域の植生豊かで透明度の高い池沼、湿地。周囲に樹林のある環境を好む。 |
エゾイトトンボの形態
オス
オスは成熟すると斑紋が青くなる。
ただし複眼は青くならない(ルリイトトンボとの識別点)。
オス(別個体)。
腹部第2節の背面のスペード型~半円形の黒色部が特徴的で、分かりやすい他種との識別点。
メス
メスにはオスに似た色の個体(オス型)と、緑色の個体の2タイプがある。
識別
オスの識別
同様に斑紋が青くなる類似種がいくつかある。
同属のオゼイトトンボやキタイトトンボとは、腹部第2節背面の黒色部がスペード型~半円型をしていることで識別できる1)。
ルリイトトンボは腹部第2節の斑紋のパターンも似ているが、成熟すると複眼まで青くなる(エゾイトトンボは青くならない)1)。
また、ルリイトトンボでは尾部下付属器が本種と異なり明瞭に長い1)。
メスの識別
同属のオゼイトトンボやキタイトトンボのメスは本種に似るが、腹部第10節背面が黒くならない1)。
ルリイトトンボのメスは腹部の黒色部が広く、腹部第8節腹面に棘がある1)。
オオイトトンボのメスともよく似ているが、本種のメスでは腹部背面の黒色部が第8節前半で狭くなる1)(オオイトトンボでは狭くならない;ただし例外の有無は未確認)。
クロイトトンボのメスとも似るが、クロイトトンボには後頭条がない。
エゾイトトンボの生態
繁殖行動
オスは縄張りを持ってメスを探し、交尾後は連結したまま産卵することが多いが単独産卵も行う1,3)。
しばしば潜水産卵も観察される1)。
分類
本種の属するエゾイトトンボ属Coenagrionは、国内の種では他にカラフトイトトンボ、オゼイトトンボ、キタイトトンボを含む1)。
エゾイトトンボ属はイトトンボ科Coenagrionidaeのタイプ属となっている。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
3)広瀬良宏・横山透・伊藤智 2007. 『北海道のトンボ図鑑』いかだ社.
編集履歴
2024/11/12 公開