シマアジ(鳥) Spatula querquedula

野鳥 > カモ目 > カモ科 > Spatula属

スペイン Delta del Llobregat 2019/3/19
※分布図は目安です。

分布1,3,4):数少ない旅鳥として全国を通過する。北海道根室市、愛知県で繁殖例がある1,4)。琉球では一部越冬するものもいる1,3,4)。海外ではヨーロッパから中央アジア、カムチャツカ、サハリンで繁殖し、アフリカ北部やインド、東南アジアで越冬する3)

オス生殖羽の白い眉斑が特徴的なカモの仲間。日本では主に旅鳥として春と秋に少数が通過する。系統的にはハシビロガモと近縁とされる。コガモよりやや大きい程度で、かなり小さめのカモである。

シマアジの概要

希少度★★★(やや稀)
全長1)37-41㎝
生息環境3)湖沼や河川、水田など
学名2)querquedula…ラテン語から(何らかのカモの一種)
英名5)Garganey「シマアジ」

シマアジの形態

※この項の記述は少ない観察経験に基づいており、誤りや不正確な表現を含む可能性があります。
その点ご了承の上ご覧ください。

オス生殖羽

三重県松阪市 2016/4/23

オス生殖羽は頭部の白い眉斑や長く伸びる肩羽など、非常に特徴的で見分けやすい。
ただし、写真のように雨覆が見えない状態では年齢の判断は困難。
この派手な羽衣は春のオス限定で、秋には雌雄ともすべて地味な見た目である(秋は幼鳥が多い)。

三重県松阪市 2016/4/23

オス生殖羽(同一個体)。
近縁のハシビロガモとは体形などがやや似るが、体サイズはハシビロガモのほうがかなり大きい。

メス生殖羽へ移行中

メスはコガモなどに似るが、眉斑が明瞭で独特の顔つき。
春になると成鳥と幼鳥の識別が難しくなる。

オス幼羽

秋に見られる個体は多くが幼鳥で、成鳥含めすべて地味な羽衣である。
雨覆の色彩が雌雄で大きく異なるため、雌雄の識別は比較的容易である(オスは淡灰色、メスは褐色)。
またオス成鳥エクリプスもよく似るが、オス幼羽のほうが雨覆の淡灰色が褐色を帯びる。

年齢の識別

秋において、幼羽は胸~腹に小斑が整然と並んで腹部全体が褐色に見える一方、成鳥オスエクリプスや成鳥メス非生殖羽では腹が白っぽい。
ただし上記特徴は春には換羽して分からなくなる。
オスにおいては雨覆の淡灰色の色合いが成鳥と幼鳥で異なり、成鳥では綺麗な淡灰色なのに対し幼鳥では褐色を帯びることで、春の時期でも識別可能。
また、オスメスともに大雨覆・次列風切の白い二本線が幼羽のほうが細い傾向。

雌雄の識別

時期や年齢を問わず、雨覆の色合いで雌雄を識別することができる4)
すなわち、雨覆が淡灰色であればオス、褐色であればメスである。

他種との識別

オス生殖羽について、特に似た種はいない。

メスや幼鳥は慣れるまで見分けにくく、特にコガモと間違えやすい。

シマアジとコガモの識別

シマアジのメスタイプとコガモのメスタイプは一見似ている。

シマアジのほうが過眼線の上にある眉斑や嘴基部付近の淡色部が明瞭で、より白っぽいため顔つきがかなり異なる。
またシマアジのほうが体サイズがやや大きく、嘴もやや大きい。
(シマアジはコガモよりもハシビロガモに近縁とされる)。

分類

亜種はない(単型種)。
本種はマガモ属Anasに分類されてきたが、最近の分類ではAnas属を細分化する説があり(例えば5))、本サイトではこれに従っている。
その場合、Spatulaはシマアジのほかハシビロガモやミカヅキシマアジなど10種からなる属となる5)

生態

食性

三重県松阪市 2016/4/23

アフリカの越冬地における研究では、狩猟で得られた本種の体内から見つかった食物のほとんどはワセビエEchinochloa colonaやスイレン属Nympheaの種子などの植物質であり、動物質はごくわずかであった6)

文献

1)桐原政志・山形則男・吉野俊幸 2009. 『日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版』文一総合出版.
2)James A. Jobling 2010. Helm Dictionary of Scientific Bird Names. Christopher Helm.
3)榛葉忠雄 2016. 『日本と北東アジアの野鳥』生態科学出版.
4)氏原巨雄・氏原道昭 2015. 『決定版 日本のカモ識別図鑑』誠文堂新光社.
5)Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2023. IOC World Bird List (v13.2). doi : 10.14344/IOC.ML.13.2.
6)Treca, B. (1981). Diet of the garganey (Anas querquedula) in the Senegal delta.

編集履歴

2024/3/7 公開