サカツラガン Anser cygnoides

野鳥 > カモ目 > カモ科 > マガン属

滋賀県長浜市 2016/1/31
※分布図は目安です。

分布4):稀な冬鳥として全国的に記録がある。モンゴル~サハリンで繁殖し、中国南東部で越冬する。

稀な冬鳥として渡来するガンの仲間。世界的に見ても分布は東アジアに限られている。日本ではかつて東京湾で群れが毎年越冬していたが、環境の変化で少数が不定期に見られるのみとなった。

サカツラガンの概要

希少度★★★★(稀)
全長2)87㎝
生息環境3)湖沼、農耕地
英名Swan Goose「ハクチョウのようなガン」

サカツラガンの形態

成鳥

滋賀県長浜市 2016/1/31

トップ画像と同一個体。
成鳥のため肩羽や雨覆、脇羽が整った縞模様をしている。
嘴基部の白色部がはっきりしていることも成鳥の特徴2)

滋賀県長浜市 2016/1/31

同一個体。
ハクチョウにも例えられる長い頸と嘴が特徴的。
脚はオレンジ色。

第1回冬羽

兵庫県稲美町 2018/12/15

この個体はほぼ成鳥と変わらない見た目だが、嘴基部の白色部がやや狭く、頸の色がくすんで見え、また中雨覆ほかに幼羽を残しているように見て取れるため第1回冬羽と判断した。

兵庫県稲美町 2018/12/15

同一個体。
尾羽は先が白く、下腹~下尾筒および上尾筒も白い。

兵庫県稲美町 2018/12/15

同一個体。
翼は上側が灰色みを帯び、風切が黒っぽいためややコントラストになって見える。


年齢の識別

幼羽では嘴基部の白色部が無いまたは目立たない2)
また雨覆や脇は整った縞模様とはならず、全体的にくすんだ色に見える。
ただし、個体によって越冬の早い段階でほとんど成羽となる場合もあると思われる。

識別

頭~頸の色彩が特徴的であるため、識別に迷うことはない。
本種を家禽化したシナガチョウは頭にこぶが目立つことや体形がぼってりしていることから識別可能(下記参照)。
なお亜種は認められていない(単型種)。

個体数について

サカツラガンの現状についてはDamba et al.(2020)4)に詳しい。
最大の繁殖地はロシア・中国との国境に近いモンゴルにあり、およそ43,000羽が繁殖している。
また、越冬地はほぼ中国南部の長江流域に限られている6)
全世界の現存個体数はおよそ60,000-90,000羽と見積もられている5)

日本では1950年ごろまで東京湾で毎年群れが越冬していたというが、最近では不定期に飛来するのみとなった1)
湿地環境の悪化等により世界的に個体数は減っていると考えられており、保護の必要性が叫ばれている。

シナガチョウ

滋賀県高島市 2016/7/23

サカツラガンを家禽化したものがシナガチョウである。
一方ツールズガチョウなどはハイイロガンを家禽化したもので、頭にこぶがないため見わけることができる。

茨城県神栖市 2016/2/21

シナガチョウ。
原種には見られない大きなこぶがある。
個体によりこぶの大きさやオレンジ色の範囲に差があるようだ。

京都市宝ヶ池 2016/1/25

白いシナガチョウ。
この場合もこぶによってエムデン種のガチョウと識別可能。

文献

1)榛葉忠雄 2016. 『日本と北東アジアの野鳥』生態科学出版.
2)真木広造・大西敏一・五百澤日丸 2014. 『決定版 日本の野鳥650』平凡社.
3)桐原政志・山形則男・吉野俊幸 2009. 『日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版』文一総合出版.
4)Damba I., Fang L., Yi K., Zhang J., Batbayar N., You J. et al. 2020. Flyway structure, breeding, migration and wintering distributions of the globally threatened Swan Goose Anser cygnoides in East Asia. Wildfowl Special Issue 6:97-123.
5)BirdLife International 2020. Species Factsheet: Anser cygnoides. BirdLife International, Cambridge, UK. Available at http://www.birdlife.org (2022/3/6閲覧)
6)An A., Cao L., Jia Q., Wang X., Zhu Q., Zhang J. et al. 2019. Changing Abundance and Distribution of the Wintering Swan Goose Anser cygnoides in the Middle and Lower Yangtze River Floodplain: An Investigation Combining a Field Survey with Satellite Telemetry. Sustainability 11(5):1398.

編集履歴

2022/3/6 公開
2024/3/3 分布図を変更