アメリカコガモ Anas carolinensis

野鳥 > カモ目 > カモ科 > Anas

大阪府摂津市 2015/2/12
※分布図は目安です。

分布1,3,4):稀な冬鳥としてコガモに混じって観察される。本来の分布域は北米。

コガモに混じって少数が渡来する稀なカモ。その名の通り本来は北米に分布する。コガモの亜種とされたこともあったが、現在では独立種として扱うのが一般的である。オスの生殖羽は見分けやすいが、それ以外ではコガモと極めてよく似ておりよく見ないと識別は難しい。

アメリカコガモの概要

希少度★★★★(国内では稀)
全長1)34-38㎝
生息環境1)池、湖、河川、干潟など
学名2)carolinensis…「カロライナの」
英名5)Green-winged Teal「緑の翼をしたコガモ」

アメリカコガモの形態

※この項の記述は少ない観察経験に基づいており、誤りや不正確な表現を含む可能性があります。
その点ご了承の上ご覧ください。

オス生殖羽

大阪府摂津市 2015/2/12

オス生殖羽。
コガモにあるような水平方向の肩羽の白線はなく、代わりに胸と脇の境界部に垂直方向の白線がある。
この個体は三列風切が伸長中。

大阪府摂津市 2015/2/12

同一個体。
脇の白線以外の部分はコガモと非常によく似ている。

大阪府摂津市 2015/2/12

同一個体。
翼下面はコガモとほぼ同じ。

大阪府摂津市 2015/2/12

同一個体。
大雨覆先端(翼鏡の上)の淡色帯はコガモより細く、またコガモより強く橙色に色づく1)

大阪府摂津市 2015/2/12

同一個体。
コガモに混じって見られることが多い。
この個体はコガモのメス2羽と行動していた。

横浜市港北区 2018/1/2

オス生殖羽(別個体;右)。
この個体はオスのコガモの群れに混じって見られた。左はコガモオス生殖羽。
最外三列風切の黒色部はコガモよりも短く、羽軸先端まで届かない1)
肩羽にわずかに白色部があるようにも見受けられ、コガモの血が入っている個体なのかもしれない。

年齢・雌雄の識別

年齢と性別の識別は基本的にコガモに準じる(コガモの性齢識別の項を参照)。
コガモと同様に個体差があるため、様々な要素を総合して判断/推定する必要がある。

コガモとの識別

コガモとはオス生殖羽を除き、極めてよく似ている。

オス生殖羽では前述の通り、白線の出方が異なることで識別可能。
それ以外の羽衣(オスエクリプス、メス非生殖羽、オス幼鳥、メス幼鳥)では最外三列風切の黒色部のパターンが最も確実な識別点となる。
すなわち、コガモでは黒色部が長く伸びて羽軸先端付近に達するが、アメリカコガモでは黒色部が短く、途中で羽縁と合流して消失する(画像準備中)1)

分類

コガモとの関係について

日本鳥類目録第7版では、アメリカコガモをコガモの亜種Anas crecca carolinensisとしている5)
しかし国際的には別種として扱う考えが一般的であり、その場合アメリカコガモはA. carolinensisとなる(例えば4))。

アメリカコガモの生態

食性と採食行動

アメリカコガモは主に植物食で、水草、藻、植物片や種子などを食べる1)
テキサス州の越冬地での調査では、ヒユモドキ、シロザ、イヌビエ、ハリイ属、キビ属、スズメノヒエ属、イヌタデ属、ナガバギシギシ等を食べていたことが確認されている6)

鳴き声

アメリカコガモの鳴き声を聞くことができたが、コガモと全く同じに聞こえた。
(大阪府摂津市 2015/2/12)

文献

1)氏原巨雄・氏原道昭 2015. 『決定版 日本のカモ識別図鑑』誠文堂新光社.
2)James A. Jobling 2010. Helm Dictionary of Scientific Bird Names. Christopher Helm.
3)榛葉忠雄 2016. 『日本と北東アジアの野鳥』生態科学出版.
4)Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2023. IOC World Bird List (v13.2). doi : 10.14344/IOC.ML.13.2.
5)日本鳥学会 2012. 『日本鳥類目録 改訂第7版』 掲載鳥類リスト.
6)Collins, D. P., Conway, W. C., Mason, C. D., & Gunnels, J. W. (2017). Winter diet of Blue-winged Teal Anas discors, Green-winged Teal Anas carolinensis, and Northern Shoveler Anas clypeata in east-central Texas. Wildfowl, 67(67), 87-99.

編集履歴

2024/10/8 公開