マイヅルテンナンショウ Arisaema heterophyllum

植物 > 被子植物 > オモダカ目 > サトイモ科 > テンナンショウ属

群馬県 2016/6/16
※分布図は目安です。

分布1,2,4):東北~九州。大橋ほか(2015)1)は本州では岩手~岡山に点在するとしているが、岩手では絶滅とされる一方8)、鳥取4)・島根5)・広島6)・山口7)からも知られている。海外では韓国、台湾、中国。

湿地に生える希少なテンナンショウの仲間で、ツルが舞うような優雅な佇まいが印象的である。湿地環境の減少と共に各地で数を減らしている。ウラシマソウと近縁であり、花序の構造もやや似たところがある。

マイヅルテンナンショウの概要

花期2)6月ごろ。
希少度★★★★(稀)
生活形多年草
生育環境2)川の氾濫原の疎林やその周辺の湿地、草原など
学名3)heterophyllum「様々な葉がある、異なる葉がある」

マイヅルテンナンショウの形態

群馬県 2016/6/16

仏炎苞は緑色で筒部は細長い。
付属体は先が糸状となり上方へ伸びる。
ウラシマソウと近縁であり、花序の構造にも類似性がある。

群馬県 2016/6/16

花序は葉よりも後に展開し、葉とほぼ同じ高さ、両性株では時に著しく低い位置につく2)

群馬県 2016/6/16

葉は1枚で鳥足状に分裂する2)
小葉は17~21枚で、中央の小葉(頂小葉)は両隣と比べて著しく小型となる2)
偽茎部が非常に長く直立しており、葉柄ははるかに短い2)

群馬県 2016/6/16

小葉は線形~長楕円形、狭倒卵形まで変化が多い1,2)

果実

群馬県 2016/6/16

若い果実。
果実は10-11月に赤く熟す2)

識別

似た種の多いテンナンショウ属の中では特徴的な種であり、見分けやすい種である。
花序がなくても生育環境や、葉軸が発達し頂小葉(中央の小葉)が著しく小型になる点などで区別できる4)
オオマムシグサも湿地に生育するが、花序も葉も一見して異なる。
花序の雰囲気はむしろハンゲ属のオオハンゲなどに若干似ているが、植物体のサイズも葉の形状も全く異なる。

マイヅルテンナンショウの生態

性転換

雌雄偽異株で、株の成長に伴い雄株から両性株に転換する。

倍数性

本種には2n=28・56・84・140・168(それぞれ2・4・6・10・12倍体)の5タイプが知られていた。
このうち日本産では12倍体のみが報告されていたが、最近になって秋田県と富山県の個体から14倍体が新たに報告されている9)

分類

ウラシマソウのページを参照。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 2018. 『日本産テンナンショウ属図鑑』北隆館.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)松本哲也, & 坂田成孝. (2020). 鳥取県東部で発見されたマイヅルテンナンショウ (サトイモ科). 植物研究雑誌95(1), 58-60.
5)柳浦正夫. (2021). 島根県で初確認されたマイヅルテンナンショウについて. 島根県立三瓶自然館研究報告, 19, 51-52.
6)広島県 2021. 『広島県の絶滅のおそれのある野生生物(第 4 版)レッドデータブックひろしま 2021』 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/tayousei/j-j2-reddata2-index3.html 2024年12月10日閲覧.
7)山口県 2019. 『レッドデータブックやまぐち2019』 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/soshiki/41/20708.html 2024年12月10日閲覧.
8)岩手県 2014. 『いわてレッドデータブック 岩手の希少な野生生物 web版 2014年版』https://www2.pref.iwate.jp/~hp0316/rd/rdb/index.html 2024年12月10日閲覧.
9)早瀬裕也, 姫野諒太郎, 堀井雄治郎, & 岩坪美兼. (2019). マイヅルテンナンショウ (サトイモ科) で新しく見つかった十四倍体サイトタイプ. 植物研究雑誌94(1), 9-14.

編集履歴

2024/12/10 公開