分布1,2):九州~八重山。分布域の北上傾向が見られる。国外では朝鮮半島、台湾、中国、東南アジア。
南日本で見られるイトトンボの仲間。琉球の名が付いているが、九州南部でも普通に見られ分布は北上傾向にある。ベニイトトンボより赤みが弱く、複眼も緑色なのが分かりやすい特徴。
リュウキュウベニイトトンボの概要
出現時期 | : | 4月下旬-10月上旬1)。八重山では周年成虫が見られる1)。 |
希少度 | : | ★★(普通) |
全長1) | : | オス34-45㎜、メス34-47㎜ |
生息環境1,2) | : | 平地~丘陵地の抽水植物、浮葉植物、沈水植物が繁茂する池沼や河川中下流域の淀みなど。かなり広範な止水域に生息するほか、植生豊かな緩流でも見られる。 |
リュウキュウベニイトトンボの形態
オス
オスは体の大部分が橙色。
ベニイトトンボに似るが、ベニイトトンボほど赤くならない。
複眼が緑色なのがよい識別点。
オス(別個体)。
副性器があることや腹端の形状でメスと区別できる。
オス(別個体)。複眼は緑色。
ベニイトトンボでは複眼まで赤くなる。
オス(別個体)。
尾部下付属器は突出する。
ベニイトトンボでは突出しない。
メス
メスの体色には個体差があり、くすんだ橙褐色のものから緑色の強いものまで見られる3)。
複眼はオスと同じく緑色。
メス(別個体)。
本種のメスの大きな特徴は腹部先端背面に黒色部があることである。
この特徴により、よく似たベニイトトンボのメスと識別できる。
識別
ベニイトトンボとの識別
九州ではベニイトトンボと分布が重なる。
オスでは複眼の色、尾部下付属器の突出具合が識別ポイントになる。
メスでは同様に複眼の色のほか、腹端上面の黒色部の有無が識別ポイントになる。
詳細は下記比較画像を参照。
キイトトンボとの識別
九州ではキイトトンボとも分布が重複する。
本種のメスはキイトトンボの黄色みが弱いメスに似るが、本種の腹部先端背面に黒色斑があることで識別できる。
アオモンイトトンボとの識別
本種の分布域にはアオモンイトトンボも普通に見られ、未熟メスは本種に似て見える場合があるが、アオモンイトトンボのメスでは腹部背面の広範囲が黒いことで見分けられる。
リュウキュウベニイトトンボの生態
繁殖行動
オスは縄張りを持ってメスを探索し、交尾後は連結したまま産卵する。
交尾態。上がオス。
産卵。
オスは直立姿勢で警護する。
分類
本種の属するキイトトンボ属Ceriagrionは、国内の属ではカラカネイトトンボ属Nehalenniaと近縁1,2)。
詳細はキイトトンボのページを参照。
人為的な移入と分布
ベニイトトンボと同様、水草の移動に伴う人為的な移入と考えられる例が知られており、本州各地や四国から記録がある1)。
現状、自然分布は九州以南に限られていると思われるが、温暖化に伴い今後分布が拡大していく可能性がある。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
3)尾園暁・渡辺賢一・焼田理一郎・小浜継雄 2007. 『沖縄のトンボ図鑑』いかだ社.
4)Mizuta, K. (1988). Adult ecology of Ceriagrion melanurum Selys and C. nipponicum Asahina (Zygoptera: Coenagrionidae). 2. Movements and distribution. Odonatologica, 17(4), 357-364.
5)Dijkstra, K. D., & Kalkman, V. J. (2012). Phylogeny, classification and taxonomy of European dragonflies and damselflies (Odonata): a review. Organisms Diversity & Evolution, 12(3), 209-227.
6)Paulson D., Schorr M., Deliry C 2022. 『World Odonata List 20220526』https://www2.pugetsound.edu/academics/academic-resources/slater-museum/biodiversity-resources/dragonflies/world-odonata-list2/ 2022/6/11閲覧
編集履歴
2024/11/2 公開