昆虫 > トンボ目 > カワトンボ科 > タイワンハグロトンボ属
分布1,2,3):奄美大島、徳之島、沖縄島。渡嘉敷島からも記録されている。日本固有種。
奄美から沖縄にかけて分布するカワトンボの仲間。オスは翅の付け根が青白色で、体は金属光沢があり美しい。奄美群島の個体群と沖縄島の個体群でオスの翅の色に差異があることが知られている。
リュウキュウハグロトンボの概要
出現時期2) | : | 2月下旬-12月下旬。年により1月にも見られる。 |
希少度 | : | ★★(普通) |
全長1) | : | オス60-67㎜、メス58-65㎜ |
生息環境1,3) | : | 河川の上流部~中流部。山間の森林に囲まれた渓流や、抽水植物や沈水植物が繁茂する清流。 |
リュウキュウハグロトンボの形態
オス
成熟オスの翅は黒く、基部付近が青白色。
青白色の部分の広さは個体群により異なり、翅裏では沖縄>奄美、翅表では沖縄<奄美1)。
オス(同一個体)とメス(手前)。
オスの体は金属光沢のある明るい緑色で、角度により青色に輝く2)。
腹部先端腹面は鮮やかな黄色1)。
メス
メスの翅は黒褐色で白い偽縁紋がある。
腹部も黒褐色。
翅を開いたメス(同一個体)。
幼虫
幼虫は他のカワトンボ科とよく似た形態をしている。
同所的に類似種はいないため見分けやすい。
幼虫(同一個体)。
識別
奄美群島、沖縄諸島に分布するカワトンボ科は本種のみのため、識別に迷うことはない。
生態
産卵
メスは単独で水中に沈んだ植物組織内に産卵する1)。
オスの求愛
本種のオスはアオハダトンボなどと同じように、腹部先端腹面の黄色い部分をメスに見せつけて求愛する1,2)。
ホバリングや、時には水面に浮かぶといった求愛行動も見られる2)。
また、縄張り占有をし、翅を開いたり閉じたりする行動をとることが知られている1)。
分類
本種は従来中国を中心に広く分布するMatrona basilaris1種のみが記載され、日本産はその亜種japonicaとされてきた1,3,5)。
その後、台湾産のMatrona cyanopteraが新種記載される4)など細分化され、2015年時点で9種に分けられるようになった5)。
本属の各種の分布、およびミトコンドリア・核DNAによる系統解析結果がYu et al.(2015)5)に示されている。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)山本哲央・新村捷介・宮崎俊行・西浦信明 2009. 『近畿のトンボ図鑑』いかだ社.
3)川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.
4)Hämäläinen, M., & Yeh, W. C. (2000). Matrona cyanoptera spec. nov. from Taiwan:(Odonata: Calopterygidae). Flumserberg Scientific Publishers.
5)Yu, X., Xue, J., Hämäläinen, M., Liu, Y., & Bu, W. (2015). A revised classification of the genus Matrona Selys, 1853 using molecular and morphological methods (Odonata: Calopterygidae). Zoological Journal of the Linnean Society, 174(3), 473-486.
編集履歴
2024/3/2 公開