昆虫 > トンボ目 > アオイトトンボ科 > アオイトトンボ属
分布1,2,3):北海道(局所的)~九州。南限は屋久島。国外では朝鮮半島、中国、ロシア(極東)。
国内に広く分布するアオイトトンボの仲間。世界的な分布は東アジアに限られる。産卵は多くの場合夜間に行われ、樹木の枝に卵を産み付けることから害虫扱いされたこともあるという。アオイトトンボとは胸部の色彩や粉の吹き方、腹部先端部の形状などで見分ける。
オオアオイトトンボの概要
出現時期1,3) | : | 夏~晩秋。近畿では10月に多い3)。アオイトトンボよりもやや遅い時期に出現する。卵越冬。 |
希少度 | : | ★(ごく普通) |
全長1) | : | オス40-55㎜、メス40-50㎜ |
生息環境1,3) | : | 平地~山地の樹林に囲まれた池沼、湿地。未熟個体は水辺に近い林床で夏を過ごす。 |
産卵1,3) | : | 午後遅い時刻から夜間にかけて連結態で樹木の枝に産卵する。昼間は連結態のまま交尾に至らずに飛び回っていることが多い。 |
オオアオイトトンボの形態
オス
オスは成熟すると腹部第10節に白い粉を吹く。
アオイトトンボによく似るが、やや大きく、アオイトトンボのように胸部に粉を吹くことはない。
正確には尾部下付属器の形状や胸部の斑紋で識別する。
メス
メスは成熟しても白い粉を吹かないか、または薄く腹部第10節に白い粉を吹く。
メスの腹端部。
腹部第9節(末端から2節目)が明らかに膨らむのが本種の特徴。
また、産卵管はアオイトトンボより大きく、横から見ると黒色部が淡色部を囲んでいる。
連結態のメス。
メス(別個体)。
上方から見たメス(同一個体)。
生態
連結態で日中を過ごすオオアオイトトンボ。
本種は連結態になってから実際に交尾に至るまでの時間が長いことが知られ、連結態のままの状態で観察される機会が多い。
交尾や産卵は夕方~夜間にかけて行われることが多く、樹木の枝に連結態のまま卵を産み付ける。
また、特定の枝に複数ペアが集まって産卵する傾向がある3)。
識別
本州以南ではアオイトトンボ、コバネアオイトトンボとの識別が問題となるが、慣れれば問題なく識別できる。
北海道においてはアオイトトンボおよびエゾアオイトトンボと同所的に分布する。この2種は互いに極めてよく似ているが、オオアオイトトンボとは比較的明瞭に識別できる。
なお、北海道における本種の分布は限定的。
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)広瀬良宏・横山透・伊藤智 2007. 『北海道のトンボ図鑑』いかだ社.
3)山本哲央・新村捷介・宮崎俊行・西浦信明 2009. 『近畿のトンボ図鑑』いかだ社.
編集履歴
2023/12/9 公開
2023/12/13 アオイトトンボ属3種の比較画像を追加