シロモジ Lindera triloba

植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > クロモジ属

佐賀県神埼市 2021/7/18
※分布図は目安です。

分布1,2,4):本州(中部以西)、四国、九州。日本固有種。

早春に花を咲かせるクスノキの仲間。クロモジと同じ属で花の時期はよく似ているが、3つに裂ける葉の形が特徴的で非常に見分けやすい。

シロモジの概要

花期1)4月
希少度★★★(やや稀)
生活形落葉低木
生育環境4)暖温帯~冷温帯下部
学名3)trilobus「3裂片の」

シロモジの形態

滋賀県大津市 2014/8/2

葉は3裂する独特の形で、葉身長7-12㎝2)
裂片の先は尖り、凹んだ部分は丸くえぐれる。

滋賀県大津市 2015/6/14

葉裏はクロモジ属らしい粉白色。
両面ともふつう無毛、ときに脈上に開出毛がある。

佐賀県神埼市 2021/7/18

ほとんどの葉は3裂するが、一部裂けない葉(不分裂葉)もある。

滋賀県大津市 2014/8/2

実生の葉。
成木と同じ形をしている。

長野県阿智村 2014/11/3

黄葉した葉。
クロモジ属の多くは黄色く黄葉する。

宮崎市 2022/4/17

花は葉が開くよりも先に咲く。
遠目にはクロモジなどとよく似ている。

宮崎市 2022/4/17

深く3裂する葉が見えていれば識別は容易。
またクロモジ類の新葉は明らかに毛が多いが、シロモジは無毛に近い。
若枝の色もクロモジのように緑にはならない。

宮崎市 2022/4/17

短い花序柄の先に、3-5個の花が散形につく1)
アブラチャンでは花序柄や若枝に皮目(斑点状の通気組織)が目立つが、シロモジにはない。

宮崎市 2022/4/17

クロモジ属はすべて雌雄異株。
この写真は雄花で、雄しべ(ふつう9個)のうち内側のものの基部に腺体があるため、複雑な構造に見える。

果実

佐賀県神埼市 2021/7/18

果実は黄褐色に熟す。

滋賀県大津市 2014/8/2

果柄・果序柄や若枝には、アブラチャンで目立つような皮目はない。

樹皮

滋賀県大津市 2014/8/2

樹皮はなめらか6)

滋賀県大津市 2014/8/2

ニホンジカの食害を受けたと考えられるシロモジの幹。
激しい食害を受けると枯死する個体もあるようだ5)

樹形

滋賀県大津市 2014/8/2

成木の樹形。

滋賀県大津市 2014/9/2

幼木の樹形。

識別

葉の形はかなり独特で、あまり似た種はない。
同属のダンコウバイも葉が3つに裂けるが、裂け方は浅く、切れ込み部分が丸くえぐれることもない。
カクレミノにも葉形は似ているが、カクレミノは常緑樹で明らかに質が厚い。
なお、同属のアブラチャンとの間に雑種アブラシロモジがあるが、かなり稀と思われる。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)田中信行・松井哲哉 (2007-) PRDB:植物社会学ルルベデータベース, 森林総合研究所.
URL: http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html 2023/11/5閲覧.
5)四国森林管理局・(株)野生動物保護管理事務所 2011. 滑床山・黒尊山国有林のニホンジカによる森林被害に関する調査 調査報告書.
6)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.

編集履歴

2023/11/5 公開