植物 > 被子植物 > クスノキ目 > クスノキ科 > クロモジ属
分布1,2,4):本州(中部以西)、四国、九州。日本固有種。
早春に花を咲かせるクスノキの仲間。クロモジと同じ属で花の時期はよく似ているが、3つに裂ける葉の形が特徴的で非常に見分けやすい。
シロモジの概要
花期1) | : | 4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
生活形 | : | 落葉低木 |
生育環境4) | : | 暖温帯~冷温帯下部 |
学名3) | : | trilobus「3裂片の」 |
シロモジの形態
葉
葉は3裂する独特の形で、葉身長7-12㎝2)。
裂片の先は尖り、凹んだ部分は丸くえぐれる。
葉裏はクロモジ属らしい粉白色。
両面ともふつう無毛、ときに脈上に開出毛がある。
ほとんどの葉は3裂するが、一部裂けない葉(不分裂葉)もある。
実生の葉。
成木と同じ形をしている。
黄葉した葉。
クロモジ属の多くは黄色く黄葉する。
花
花は葉が開くよりも先に咲く。
遠目にはクロモジなどとよく似ている。
深く3裂する葉が見えていれば識別は容易。
またクロモジ類の新葉は明らかに毛が多いが、シロモジは無毛に近い。
若枝の色もクロモジのように緑にはならない。
短い花序柄の先に、3-5個の花が散形につく1)。
アブラチャンでは花序柄や若枝に皮目(斑点状の通気組織)が目立つが、シロモジにはない。
クロモジ属はすべて雌雄異株。
この写真は雄花で、雄しべ(ふつう9個)のうち内側のものの基部に腺体があるため、複雑な構造に見える。
果実
果実は黄褐色に熟す。
果柄・果序柄や若枝には、アブラチャンで目立つような皮目はない。
樹皮
樹皮はなめらか6)。
ニホンジカの食害を受けたと考えられるシロモジの幹。
激しい食害を受けると枯死する個体もあるようだ5)。
樹形
成木の樹形。
幼木の樹形。
識別
葉の形はかなり独特で、あまり似た種はない。
同属のダンコウバイも葉が3つに裂けるが、裂け方は浅く、切れ込み部分が丸くえぐれることもない。
カクレミノにも葉形は似ているが、カクレミノは常緑樹で明らかに質が厚い。
なお、同属のアブラチャンとの間に雑種アブラシロモジがあるが、かなり稀と思われる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)田中信行・松井哲哉 (2007-) PRDB:植物社会学ルルベデータベース, 森林総合研究所.
URL: http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html 2023/11/5閲覧.
5)四国森林管理局・(株)野生動物保護管理事務所 2011. 滑床山・黒尊山国有林のニホンジカによる森林被害に関する調査 調査報告書.
6)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.
編集履歴
2023/11/5 公開