ヤンマ科の概要
不均翅亜目の中では原始的なグループで、大型の種を多く含む。
世界に54属494種、日本に9属23種が分布している3)。
ヤンマ科掲載種一覧
日本産23種のうち12種を掲載。
サラサヤンマ属 Sarasaeschna
サラサヤンマ S. pryeri
北海道~九州に分布。
雌雄とも腹部背面に三角形の黄色斑が並ぶ。
メスは翅の一部が黄色く腹部が太短い。
沖縄島にはより黒っぽいオキナワサラサヤンマが分布する。
コシボソヤンマ属 Boyeria
コシボソヤンマ B. maclachlani
北海道~九州に分布。
オスは和名の通り腹部が細くくびれる。
写真の個体は羽化直後であり、オスに本来見られる翅先端の小さな褐色斑が現れていない。
アオヤンマ属 Aeschnophlebia
アオヤンマ A. longistigma
北海道~九州のやや限られた地域に分布。
全身緑色で、腹部は雌雄ともくびれず太い。
ネアカヨシヤンマ A. anisoptera
東北~九州のやや限られた地域に分布。
アオヤンマと近縁で、同じようにオスでも腹部がくびれない。
黄昏時に上空を飛翔して餌を捕る性質があり、翅の先端の褐色部が目立つ。
また和名の通り、特に未成熟個体は翅の付け根が橙色。
オスは成熟すると複眼が青くなる。
カトリヤンマ属 Gynacantha
カトリヤンマ G. japonica
東北~沖縄諸島に分布。
色彩のやや似るギンヤンマの仲間よりも細身で、オスの尾部上付属器やメスの尾毛が長いのが特徴的。
オスは成熟すると腹部の付け根付近が一部青くなる。
メスは腹部先端付近に下向きの棘が2本ある。
また種子島以南にはリュウキュウカトリヤンマが分布し、分布が重複する。
リュウキュウカトリヤンマは体色がより暗く、尾部上付属器や尾毛がカトリヤンマより短い。
トビイロヤンマ属 Anaciaeschna
マルタンヤンマ A. martini
東北~奄美大島に分布。
オスは成熟すると複眼や斑紋が青色になり非常に美しい。
メスは翅が褐色で、特に付け根の色が濃い。
黄昏時に上空を飛翔する性質がある。
ヤブヤンマ属 Polycanthagyna
ヤブヤンマ P. melanictera
東北~沖縄諸島に分布。
オスは成熟すると複眼や腹部の一部が青色になる。
メスは翅が褐色。メスの複眼は緑褐色だが青みを帯びる個体もいる。
ルリボシヤンマ属 Aeshna
オオルリボシヤンマ A. crenata
北海道~九州に分布。
成熟オスは斑紋が青くなる。
またメスにもオスに近い色になるものがいる。
ルリボシヤンマと異なり、腹部各節の前端に環状の斑紋がある。
ギンヤンマ属 Anax
ギンヤンマ A. parthenope
北海道~八重山諸島までほぼ全国に分布。
成熟オスは腹部の基部付近が青くなる。
またメスにもオスに近い色になるものがいる。
上空を飛翔していると翅の褐色がよく目立つ。
南西諸島ではオオギンヤンマ、リュウキュウギンヤンマとの識別に注意。
クロスジギンヤンマ A. nigrofasciatus
北海道~奄美大島に分布。
ギンヤンマよりも閉鎖的な暗い池に好んで生息する。
オスは成熟すると複眼上部や腹部の斑紋が青くなる。
雌雄ともに胸部側面に黒い筋が入るため識別できる。
オオギンヤンマ A. guttatus
北海道から八重山諸島まで、ほぼ全国で飛来記録がある。
南ほどよく見られ、南西諸島では定着している可能性もある。
前額にギンヤンマやリュウキュウギンヤンマにあるような目立った斑紋がないのが大きな特徴。
また腹部の斑紋はギンヤンマのようにつながらず、3つずつに分かれる。
リュウキュウギンヤンマ A. panybeus
口永良部島~八重山諸島に分布。
雌雄とも前額にT字状の黒斑がある(ギンヤンマでは横斑、オオギンヤンマにはない)。
またオスの腹部の斑紋はオオギンヤンマよりも小さく、腹部全体が黒っぽく見える。
日本産ヤンマ科一覧
9属23種が分布している。
属名 | 種名1,3) | 国内分布1,4) |
---|---|---|
サラサヤンマ属 | サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri | 北海道~九州 |
オキナワサラサヤンマ Sarasaeschna kunigamiensis | 沖縄島北部~中部 | |
コシボソヤンマ属 | コシボソヤンマ Boyeria maclachlani | 北海道~九州 |
ミルンヤンマ属 | イシガキヤンマ Planaeschna ishigakiana | 奄美大島、西表島 |
サキシマヤンマ(リスヤンマ) Planaeschna risi | 石垣島、西表島 | |
ミルンヤンマ Planaeschna milnei | 北海道~奄美群島 | |
アオヤンマ属 | アオヤンマ Aeschnophlebia longistigma | 北海道~九州 |
ネアカヨシヤンマ Aeschnophlebia anisoptera | 東北~九州 | |
カトリヤンマ属 | カトリヤンマ Gynacantha japonica | 東北~沖縄諸島 |
リュウキュウカトリヤンマ Gynacantha ryukyuensis | 種子島~八重山 | |
トビイロヤンマ属 | トビイロヤンマ Anaciaeschna jaspidea | 沖縄諸島~八重山 |
マルタンヤンマ Anaciaeschna martini | 東北~奄美大島 | |
ヤブヤンマ属 | ヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera | 東北~沖縄諸島 |
ルリボシヤンマ属 | マダラヤンマ Aeshna soneharai | 北海道~中部 |
オオルリボシヤンマ Aeshna crenata | 北海道~九州 | |
ルリボシヤンマ Aeshna juncea | 北海道~中国、四国 | |
イイジマルリボシヤンマ Aeshna subarctica | 北海道 | |
ギンヤンマ属 | ヒメギンヤンマ Anax ephippiger | 飛来記録(本州他) |
アメリカギンヤンマ Anax junius | 飛来記録(硫黄島) | |
ギンヤンマ Anax parthenope | 北海道~八重山 | |
クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus | 北海道~奄美大島 | |
オオギンヤンマ Anax guttatus | 飛来記録(北海道~八重山) | |
リュウキュウギンヤンマ Anax panybeus | 口永良部島~八重山 |
文献
1)尾園暁・川島逸郎・二橋亮 2021. 『日本のトンボ 改訂版』文一総合出版.
2)Bybee S. M., Kalkman V. J., Erickson R. J., Frandsen P. B., Breinholt J. W., Suvorov A. et al. 2021. Phylogeny and classification of Odonata using targeted genomics. Molecular Phylogenetics and Evolution 160:107115.
3)Paulson D., Schorr M., Deliry C 2022. 『World Odonata List 20220526』https://www2.pugetsound.edu/academics/academic-resources/slater-museum/biodiversity-resources/dragonflies/world-odonata-list2/ 2022/6/10閲覧.
4)尾園暁・渡辺賢一・焼田理一郎・小浜継雄 2007. 『沖縄のトンボ図鑑』いかだ社.
5)山本哲央・新村捷介・宮崎俊行・西浦信明 2009. 『近畿のトンボ図鑑』いかだ社.
6)広瀬良宏・伊藤智・横山透 2007. 『北海道のトンボ図鑑』いかだ社.
編集履歴
2022/7/24 公開