フウトウカズラ Piper kadsura

植物 > 被子植物 > コショウ目 > コショウ科 > コショウ属

宮崎県串間市 2016/5/9
※分布図は目安です。

分布1,2,3):本州(関東南部以西)、四国、九州~八重山諸島、伊豆諸島、小笠原諸島(父島、母島、火山列島)。国外では朝鮮半島南部、台湾、中国南部。

コショウと近縁なつる性の常緑木本。暖地の海沿いに普通に見られ、照葉樹林の林内や林縁に生える。雌雄異株で、春~初夏に細長く目立つ花序をつける。葉をちぎるとコショウに似た香りがすることも特徴。

フウトウカズラの概要

花期1)4-5月
希少度★★(普通)
生活形常緑つる性木本
生育環境5)海岸近くの照葉樹林内や林縁
学名kadsura:日本語の「かずら(つる植物)」からと考えられる

フウトウカズラの形態

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉は全縁で互生する3)
葉身は長さ5-8㎝、心形~卵形でやや細長い形のものもある。
伊豆諸島や三浦半島には葉身長が11-16㎝になるオオバフウトウカズラと俗称されるものがあるという5)

高知県土佐清水市 2015/10/11

葉裏や葉柄には毛が散生する4)
基部付近で分かれる5本前後の葉脈が目立つ。
葉裏の脈はやや浮き出る。

高知県土佐清水市 2015/10/11

暗緑色で表面の光沢は弱い。
独特の形状と質感で見分けやすい。

高知県土佐清水市 2015/10/11

宮崎県串間市 2016/5/9

花序は長さ3-8㎝、葉と対生して垂れ下がる1,5)
雌雄異株だが、ときに1つの花序に雄花と雌花が混生することがある5)

宮崎県串間市 2016/5/9

雄花序の拡大。
雄花は3本の雄しべからなる単純な構造5)

宮崎県串間市 2016/5/9

沖縄県石垣島 2015/3/4

茎は地上や樹幹などを這い、節から根を出す。
なお、葉の基部には枝を一周する線がある4)

フウトウカズラの生育環境

高知県土佐清水市 2015/10/11

暖地の海沿いの照葉樹林でよく見かける。
林内や林縁に生え、樹木など他物に絡みつき登っていく。

高知県土佐清水市 2015/10/11

絡みつくもののない場所では、時に地面を覆うように広がる。

識別

海岸の照葉樹林に生えるつる性木本で、葉形がやや似るものはイタビカズラの仲間くらいである。
イタビカズラは本種よりも葉形が細長い傾向があり、葉裏の側脈はフウトウカズラよりも明瞭に浮き出る。また、フウトウカズラのように基部で分岐する5本前後の葉脈が目立つことはない。
オオイタビヒメイタビは本種ほど葉が尖らず、葉裏の葉脈が細脈に至るまで明瞭に浮き出て目立つ。

また、ウコギ科のキヅタも同様の環境に生える場合があるが、葉の表面に光沢があり、葉柄が長く、葉身の形も異なるため容易に識別できる。

迷ったら、フウトウカズラは葉をちぎるとコショウに似た香りがするため、確認してみると良いだろう。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)豊田武司 2014. 『小笠原諸島 固有植物ガイド』ウッズプレス.
3)琉球の植物研究グループ 国立科学博物館 2018-.『琉球の植物データベース』 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/project/hotspot_japan/ryukyus/db/ 2021/8/26閲覧.
4)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
5)神奈川県植物誌調査会 2018. 『神奈川県植物誌2018電子版』神奈川県植物誌調査会.

編集履歴

2021/8/27 公開