植物 > 被子植物 > コショウ目 > コショウ科 > コショウ属
分布1,2,3):本州(関東南部以西)、四国、九州~八重山諸島、伊豆諸島、小笠原諸島(父島、母島、火山列島)。国外では朝鮮半島南部、台湾、中国南部。
コショウと近縁なつる性の常緑木本。暖地の海沿いに普通に見られ、照葉樹林の林内や林縁に生える。雌雄異株で、春~初夏に細長く目立つ花序をつける。葉をちぎるとコショウに似た香りがすることも特徴。
フウトウカズラの概要
花期1) | : | 4-5月 |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形 | : | 常緑つる性木本 |
生育環境5) | : | 海岸近くの照葉樹林内や林縁 |
学名 | : | kadsura:日本語の「かずら(つる植物)」からと考えられる |
フウトウカズラの形態
葉
葉は全縁で互生する3)。
葉身は長さ5-8㎝、心形~卵形でやや細長い形のものもある。
伊豆諸島や三浦半島には葉身長が11-16㎝になるオオバフウトウカズラと俗称されるものがあるという5)。
葉裏や葉柄には毛が散生する4)。
基部付近で分かれる5本前後の葉脈が目立つ。
葉裏の脈はやや浮き出る。
暗緑色で表面の光沢は弱い。
独特の形状と質感で見分けやすい。
花
花序は長さ3-8㎝、葉と対生して垂れ下がる1,5)。
雌雄異株だが、ときに1つの花序に雄花と雌花が混生することがある5)。
雄花序の拡大。
雄花は3本の雄しべからなる単純な構造5)。
根
茎は地上や樹幹などを這い、節から根を出す。
なお、葉の基部には枝を一周する線がある4)。
フウトウカズラの生育環境
暖地の海沿いの照葉樹林でよく見かける。
林内や林縁に生え、樹木など他物に絡みつき登っていく。
絡みつくもののない場所では、時に地面を覆うように広がる。
識別
海岸の照葉樹林に生えるつる性木本で、葉形がやや似るものはイタビカズラの仲間くらいである。
イタビカズラは本種よりも葉形が細長い傾向があり、葉裏の側脈はフウトウカズラよりも明瞭に浮き出る。また、フウトウカズラのように基部で分岐する5本前後の葉脈が目立つことはない。
オオイタビやヒメイタビは本種ほど葉が尖らず、葉裏の葉脈が細脈に至るまで明瞭に浮き出て目立つ。
また、ウコギ科のキヅタも同様の環境に生える場合があるが、葉の表面に光沢があり、葉柄が長く、葉身の形も異なるため容易に識別できる。
迷ったら、フウトウカズラは葉をちぎるとコショウに似た香りがするため、確認してみると良いだろう。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)豊田武司 2014. 『小笠原諸島 固有植物ガイド』ウッズプレス.
3)琉球の植物研究グループ 国立科学博物館 2018-.『琉球の植物データベース』 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/project/hotspot_japan/ryukyus/db/ 2021/8/26閲覧.
4)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
5)神奈川県植物誌調査会 2018. 『神奈川県植物誌2018電子版』神奈川県植物誌調査会.
編集履歴
2021/8/27 公開