ウラジロモミ Abies homolepis

植物 > 裸子植物 > マツ目 > マツ科 > モミ属

岐阜県高山市 2014/9/22
※分布図は目安です。

分布1):本州(福島県三本槍岳~中部地方・紀伊半島)、四国

冷温帯から亜高山帯にかけて分布するモミの仲間。若枝に毛がないことを確認すると識別しやすい。

ウラジロモミの概要

花期1)5-6月
希少度★★(普通)
大きさ1)高さ30-40m、幹径1m
生活形常緑高木
生育環境1,2)標高1000-1800(2000)mの山地
和名葉裏が白く見えることから

ウラジロモミの形態

京都府南丹市美山町 2014/9/14

枝ぶりは同属多種とよく似る。

兵庫県篠山市 2015/3/14

葉先はモミほど尖らず、特に成木の日に当たる葉では先が丸い。

兵庫県篠山市 2015/3/14

葉は長さ10-25(35)㎜1,2)。葉裏は2本の白い気孔帯があり、モミより白く見えることが多い2)

葉裏と枝

奈良県上北山村大台ケ原 2015/5/17

若枝は無毛なのが大きな特徴。モミやシラビソ、オオシラビソなどの同属多種は毛が生えるため、この点で識別可能。

奈良県上北山村大台ケ原 2015/5/17

葉の基部は丸く広がる。これはモミ属に共通する特徴である2)

奈良県上北山村大台ケ原 2015/5/17

2年目の枝。枝は縦筋が目立つ。

樹皮

岐阜県高山市 2014/9/22

ウラジロモミの樹皮はモミよりもやや赤っぽい1)

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、モミ属全種の比較表については「モミ属」のページをご参照ください。

識別のポイント

日本産モミ属には5種が含まれる。また、ツガ属、トウヒ属やトガサワラ、また科は異なるがイヌガヤ、カヤ、イチイなどもやや似るため注意が必要である。カラマツ属、マツ属は一見して異なるため割愛する。

トガサワラ(トガサワラ属)との違い

トガサワラは紀伊半島と高知県の中間温帯に稀に生え、やや似るが、めったに見る機会はないと思われる。

葉の基部ウラジロモミの葉の基部は丸く広がるが(モミ属共通)、トガサワラの葉の基部は広がらない2)
若枝無毛である点は同じ。ウラジロモミの若枝は淡い黄褐色で縦筋が目立つのに対し、トガサワラの若枝は白っぽい黄褐色2)
分布ウラジロモミは本州・四国の冷温帯~亜高山帯に普通に生える。トガサワラは紀伊半島・高知県の中間温帯に稀。

ツガ属、トウヒ属との違い

ツガ属およびトウヒ属の葉の基部には葉枕が発達する。ウラジロモミを含むモミ属にはこれがない。また、トウヒ属は葉先が尖る点でも識別可能。

ツガの葉枕
トウヒの葉枕

イヌガヤ、カヤ、イチイとの違い

イチイ科の3種(イヌガヤ、カヤ、イチイ)はいずれも葉先が丸くならずに尖る点で識別可能。ウラジロモミは葉先が丸く、やや2叉して凹む(幼木では尖ることもあるが、2叉しているので区別できる)。

ウラジロモミ 葉先は丸くやや凹む
イチイ 葉先は尖る

モミ属他種(トドマツ、モミ、シラビソ、オオシラビソ)との違い

日本産モミ属の他種(トドマツ、モミ、シラビソ、オオシラビソ)はすべて若枝が有毛。ウラジロモミは無毛なので、この点で確実に識別できる。また、トドマツは北海道以北にあり分布が重ならない。

ウラジロモミ 若枝は無毛
オオシラビソ 若枝は有毛 

また、ウラジロモミとモミは葉の尖り具合により一見して区別できる。モミは葉先が2叉してよく尖るが、ウラジロモミはふつう丸い。ウラジロモミの幼木ではやや2叉して尖る場合もあるが、モミほど明瞭ではない。(変異があるため慣れるまでは注意)

ウラジロモミ 葉先は丸いことが多い
モミ 葉先は2叉し尖る 

さらに、ウラジロモミの葉裏は名前の通り白っぽく見えるのに対し、モミの葉裏はあまり白くならない点も異なっている。

ウラジロモミ 葉裏は気孔帯の白が目立つ
モミ 葉裏は緑白色 

ウラジロモミの生育環境

標高1000-1800(2000)mの冷温帯~亜高山帯に出現し、下部ではモミと、上部ではシラビソと混生する1,2)

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.

編集履歴

2021/7/1 公開