分布1):本州(福島県以南)~屋久島。国外では韓国鬱陵島に分布。
山地に生える針葉樹。モミと共に、中間温帯を代表する「モミ・ツガ林」を構成する。モミほど葉先は尖らない。高標高地ではコメツガとの識別に注意。
ツガの概要
花期1) | : | 4-5月 |
希少度 | : | ★★(普通) |
大きさ1) | : | 高さ25-30m、幹径約1m |
生活形 | : | 常緑高木 |
生育環境2) | : | おもに中間温帯の山地~丘陵の尾根や岩場 |
学名3) | : | フィリップ・フォン・シーボルトへの献名 |
ツガの形態
葉
長さ1-2㎝で長短のばらつきがある1)。コメツガより長く、モミより短い。葉先は鈍頭で少し凹む。
葉裏には2本の白い気孔帯がある。
葉枕
葉の付け根には葉枕と呼ばれる膨らみがある。モミ属にはない。葉枕はツガ属のほか、トウヒ属にも見られる。
球果(松ぼっくり)
花の咲いた年の秋に熟し、枝から下垂する。長さは約2.5㎝でコメツガより大きい1)。
種子
種子は長さ4-6㎜、翼があり風で散布される。
樹皮
灰赤褐色で深く縦裂する。
ツガの生育環境
低地~標高2000m以下の山地に生える4)。モミとよく混生し林を作る2)。モミと合わせ、暖温帯常緑広葉樹林と冷温帯落葉広葉樹林の境界に位置する「中間温帯」を代表する樹種。
生育地の林床ではしばしば実生や稚樹が見られる。
識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
ツガ属とマツ科の他属との違い
葉枕が発達するのが本属の大きな特徴。同様の特徴を持つのは日本産の針葉樹では他にトウヒ属Piceaのみ。
トウヒ属とは、ツガ属の2種の葉先が尖らず、少し凹むことにより区別可能。
ツガとコメツガの違い
ツガとコメツガはよく似ている。球果のサイズや若枝の毛の有無で見分けるのが確実。また、ツガのほうがより低標高地に多い。
ツガ | コメツガ | |
---|---|---|
葉の長さ2) | 長い | 短い |
樹皮1) | 灰赤褐色 | 灰褐色 |
若枝2) | 無毛 | 微毛が生える |
球果1) | 長さ約2.5㎝ | 長さ1.5-2.0㎝ |
果柄2) | 曲がる | あまり曲がらない |
冬芽1) | 先が尖る | 先は丸い |
標高2,4) | 2000m程度まで | 800-3000m程度 |
モミとツガの見分け方
モミとツガはともに中間温帯を代表する樹種で、よく混生する。モミのほうが葉が長く、葉先がよく尖るため一見して区別できる。
また、モミにはツガにあるような葉枕がないため、枝を見ても識別できる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)田中信行・松井哲哉 (2007-) PRDB:植物社会学ルルベデータベース, 森林総合研究所.
http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/prdb/index.html. 2021年2月14日閲覧.
編集履歴
2021/7/1 公開