ソテツ Cycas revoluta

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ソテツ
沖縄県国頭村 2014/3/3
※分布図は目安です。

分布(1,2:九州(宮崎県、鹿児島県)、琉球。北限は宮崎県串間市都井岬。中国福建省の分布が移入であれば日本固有種。暖地で栽培される。

裸子植物の仲間。日本に自生する種子植物の中では最も古く分化した種とされる。亜熱帯の海岸の岩場に生え、暖地でしばしば植栽される。ヤシのような見た目が特徴的。

ソテツの概要

花期(16-8月
希少度★★★(やや稀)
大きさ(1高さ1.5-8m、幹径20-30㎝
生活形(1常緑低木
生育環境(3海岸の崖や風衝地
和名(4鉄を与えると蘇生することから蘇鉄となったという説がある。
学名(5revolutus「後方へ巻いた」

ソテツの識別

葉は1回羽状複葉で幹の先端に集まってつき、全体の姿は特異で見分けやすい。葉はヤシ類(単子葉類)とやや似るが、全く違う仲間。樹皮を見ると分かりやすく、ソテツの樹皮は古い葉の基部が残り、鱗模様に覆われて黒褐色(3。また、木生シダであるヘゴの仲間は葉が複数回羽状複葉。

ソテツの形態

沖縄県国頭村 2014/3/3

1回羽状複葉で、長さ100-150㎝、幅20-30㎝。小葉は線形で多数が互生し、長さ8-20㎝で全縁(1

沖縄県国頭村 2014/3/3

縁は多少反り、裏面は淡緑色で軟毛がある。中央脈は裏面で隆起する(1

沖縄県国頭村 2014/3/3

幹径20-30㎝。表面は古い葉の基部に覆われ、菱形の細かい網目模様となる(1

雌花 和歌山市(植栽) 2014/12/23

雌花(1
雌雄異株。褐色毛を密生する大胞子葉からなる。大胞子葉は長さ約20㎝、先は羽裂し、柄に2‐8個の直生胚珠が互生する。

雄花(1
円柱形の球果状で茎頂に直立し、長さ50-70㎝、多数の鱗片(小胞子葉)からなる。鱗片はやや長方形で先は三角形、長さ約3㎝、下面に花糸のない葯が多数密着する。

ソテツの生育環境

沖縄県国頭村 2014/3/3

海岸の崖や風衝地に生える(3
根に藍藻類を共生させて根粒を作り、窒素固定を行うことが知られている(6

ソテツの受粉様式

Kono & Tobe(2007)では、ソテツの受粉様式について検討している(7。それによると、ソテツは昆虫と風の両方を利用しており、特に雄株と雌株が2m以内の距離にある場合には風媒が大きな役割を果たしているという。また、ポリネーターとしてクロハナケシキスイが有力であるとも述べている。

ソテツ毒・サイカシンとソテツ地獄

ソテツには果実や根、茎、葉にサイカシンcycasinと呼ばれる発癌性物質を含んでおり、中毒を起こすと場合により死に至ることもある(2
沖縄では救荒植物として利用された歴史があり、茎の髄を砕いて採ったでんぷんや果実を食していたという(1,2。第一次世界大戦の戦後恐慌では毒抜きが不十分なまま本種を食したために中毒者が多発し、恐慌の悲惨さとともに「ソテツ地獄」として語り継がれることとなった(8

クロマダラソテツシジミ

鹿児島県徳之島町 2019/10/18

クロマダラソテツシジミはソテツのみを食草とする蝶の仲間で、九州南部以南に定着している。かつては国内に分布しておらず、1992年に沖縄島で初記録された。分散力が高く、関東以南の暖地で一時発生することがあり、植栽用ソテツの害虫として問題となる(9

ギャラリー

芽吹き 沖縄県国頭村 2014/3/3
キイロワタフキカイガラムシ 高知県室戸市(植栽) 2015/11/22

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)守田則一 2010. 天然発癌物質ソテツ毒サイカシンの研究とHealth and Human Ecology. 民族衛生 76(6), 235-236.
3)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
4)栄喜久元 2003. 『蘇鉄のすべて』南方新社.
5)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
6)Hashidoko Y.,Nishizuka H., Tanaka M., Murata K., Murai Y., Hashimoto M. 2019. Isolation and characterization of 1-palmitoyl-2-linoleoyl-sn-glycerol as a hormogonium-inducing factor (HIF) from the coralloid roots of Cycas revoluta (Cycadaceae). Scientific Reports 9, 4751.
7)Kono M., Tobe H. 2007. Is Cycas revoluta (Cycadaceae) wind- or insect-pollinated? American Journal of Botany 94(5), 847–855
8)読谷バーチャル平和資料館『5.ソテツ地獄』https://heiwa.yomitan.jp/4/3327.html 2021年1月31日閲覧.
9)日本チョウ類保全協会(編) 2012.『フィールドガイド 日本のチョウ』誠文堂新光社.

編集履歴

2021/7/1 公開