シラビソ Abies veitchii

植物 > 裸子植物 > マツ目 > マツ科 > モミ属

長野県木曽町 標高約1400m 2015/8/29
※分布図は目安です。

分布1):本州(福島県吾妻山~中部地方、紀伊半島)、四国。

オオシラビソなどとともに、本州亜高山帯の針葉樹林を代表する樹種の一つ。細長い葉が特徴的。

シラビソの概要

花期1)6月
希少度★(ごく普通)
大きさ1)高さ25m、幹径80㎝
生活形1)常緑高木
生育環境亜高山帯
別名シラベ
学名3)エクスターおよびチェルシーの種苗業者ヴィーチ家の人物への献名

シラビソの形態

葉と枝

長野県木曽町 標高約1400m 2015/8/29

長さ15-25mm、オオシラビソよりも細長い2)

長野県木曽町 標高約1400m 2015/8/29

葉裏には2本の白い気孔帯がある。

長野県木曽町 標高約1400m 2015/8/29

若枝には灰褐色の短毛が生える。葉の基部は丸く広がる(モミ属に共通の特徴)2)

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、モミ属全種の比較表については「モミ属」のページをご参照ください。

識別のポイント

日本産モミ属は他に4種ある(モミ、ウラジロモミ、オオシラビソ、トドマツ)。特にオオシラビソとはよく混生する。トドマツは北海道以北にあり、分布が重ならない。

シラビソとオオシラビソの違い

オオシラビソのほうが葉が幅広く短い。
また、オオシラビソは枝葉を上から見た時、枝が葉に隠れてよく見えない。一方、シラビソは隙間が大きく枝がよく見える2)

オオシラビソ 葉は短い。葉に隠れて枝がよく見えない
シラビソ 葉は細長い。隙間から枝が見える

シラビソとウラジロモミの違い

シラビソの若枝には灰褐色の短毛が生える2)。ウラジロモミは無毛のためここを見れば確実に見分けられる。

シラビソ 灰褐色の短毛が生える
ウラジロモミ 若枝は無毛

シラビソとモミの違い

モミの若い個体は葉先が大きく2叉して尖るため一見して区別できる。
またモミは低標高地に生えるため普通混生しない。
モミの成木では葉先があまり尖らず丸いものもあるが、シラビソのほうが葉が細長く、葉裏の白い気孔帯はモミよりはっきりと白いため区別できる。

シラビソ 葉先は丸い
モミ 葉先は2叉し尖る 
シラビソ 葉は細長く気孔帯ははっきり白い
モミ 葉は幅広く気孔帯はあまり白くない 

シコクシラベ

四国に分布するものは葉の長さが短く(15㎜前後)先が太く、球果もやや小さく丸みを帯びることからシコクシラベvar. reflexaとして変種に分ける場合がある1,2)

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.

編集履歴

2021/7/1 公開
2022/3/26 モミとの識別の項を追記修正