植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > ヒノキ科 > ビャクシン(ネズミサシ)属
分布2):小笠原(父島、兄島、弟島、母島、向島)
小笠原に自生する唯一の在来針葉樹。オキナワハイネズは本種の変種とされている。小笠原の固有変種とされ、山地の尾根などに生える。
シマムロの概要
花期2,4) | : | (3)4-5月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
大きさ1) | : | 匍匐性、時に直立し高さ13m |
生活形1) | : | 常緑低木~小高木 |
生育環境 | : | 山地の尾根など |
別名 | : | ヒデ、ヒデノキ |
学名3) | : | taxifolius「イチイのような葉の」 |
シマムロの形態
葉
枝ぶりは同じ属のネズミサシなどに似る。
葉は3枚ずつつく(三輪生)。長さ8-15㎜。
葉の表面の白い部分(気孔帯)は2本である。
樹皮
樹皮は暗褐色で不揃いに裂ける2)。
識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
識別のポイント
小笠原に自生する在来の針葉樹はシマムロのみのため、通常識別に迷うことはない。
小笠原には他に外来のリュウキュウマツが帰化しているが、葉の長さなどから識別は容易である。
シマムロとイブキ、ネズ、ハイネズ、ミヤマネズの見分け方
国内のビャクシン(ネズミサシ)属には他にイブキ、ネズ、ハイネズ、ミヤマネズの4種があるが、いずれも分布は重ならない。一方、変種関係にあるオキナワハイネズは他種と時に分布域が重なる。
見た目で見分けるには、葉の白い部分(気孔帯)の数を見ると良い。気孔帯が2本あるのはシマムロ(オキナワハイネズ)とイブキのみであり、他3種は1本のみである。
また、イブキは葉に顕著な2形があり、気孔帯のある針状の葉よりも鱗状の葉のほうが多いため一見して区別できる。
イブキ | ネズ | ハイネズ | ミヤマネズ | シマムロ | |
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分布 | 北~九 | 本・四・九 | 北・本・九 | 北・本 | 本・小笠原 |
環境 | 海岸/高山 | 丘陵 | 海岸 | 高山 | 尾根 |
葉形 | 鱗状/針状 | 針状 | 針状 | 針状 | 針状 |
樹形 | 匍匐~直立 | 直立 | 匍匐 | 匍匐~斜上 | 匍匐~直立 |
気孔帯 | 2本 | 1本(細い) | 1本(細い) | 1本(太い) | 2本(太い) |
シマムロとオキナワハイネズ
シマムロの変種であるオキナワハイネズは房総半島から琉球にかけて分布し、球果がやや大きく、葉がより密につくなどの違いがある。
シマムロの生育環境
山地の尾根など、土壌の薄い乾燥した岩場に多い2)。
この株は同様の環境を好むシマイスノキと寄り添って生えていた。
周囲には同じく乾いた尾根に多いリュウキュウマツ、ハウチワノキ、シラゲテンノウメなども見られた。写真左に写り込んでいるイネ科は外来種のアイダガヤ。
このような環境に生える場合はふつう低木~匍匐状だが、土壌のよい場所では直立し高く成長する場合がある。
利用
枯木は樹脂が多く燃えやすいため、戦前はよく焚き付けに利用された。
そのため、ヒデ(火出)あるいはヒデノキという名で呼ばれるようになったとされている2)。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)豊田武司 2014. 『小笠原諸島 固有植物ガイド』ウッズプレス.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)山下武秀 2002. 『小笠原の植物 フィールドガイド』風土社.
編集履歴
2021/7/1 公開