センリョウ Sarcandra glabra

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沖縄県西表島 2016/8/13
※分布図は目安です。

分布1,2,4,5):本州(関東南部・東海・紀伊半島以南)、四国、九州、琉球(~与那国島)。分布域より北の地域においても市街地近郊で栽培からの逸出が見られる1,2)。海外では台湾、中国中南部、アッサム、東南アジア1)

暖地の照葉樹林に生える常緑樹。庭木としてもよく栽培され、人里周辺で逸出しているのを見かける。名前の似ているマンリョウやイズセンリョウとは系統的に大きく離れた植物である。

センリョウの概要

花期1)6-7月
希少度★★★(やや稀)
生活形1,2)常緑低木
生育環境暖地の林内4)。庭木としてよく植えられる1,2)
学名3)glaber「なめらかな、無毛の」
※glabraは女性形

センリョウの形態

沖縄県国頭村 2014/3/3

葉は対生し、やや肉質で光沢があり、粗い鋸歯がある。
葉身長9-15㎝2)

大阪府茨木市 2014/2/26

葉は両面無毛1)

果実

沖縄県国頭村 2014/3/3

果実は核果、球形で直径5-6㎜1)

静岡市 2014/1/2

果実は熟すと赤くなる1)

大阪府茨木市 2014/2/5

節は膨らんで関節を作る。

キミノセンリョウ

大阪府茨木市 2014/2/26

稀に果実が黄色いものがあり、品種キミノセンリョウf. flavaと呼ばれる。
ここのものは分布的にも、恐らく栽培品が逸出したものと考えられる。

大阪府茨木市 2014/2/26

キミノセンリョウの黄色い果実。

識別

常緑樹で葉が対生し、粗い鋸歯がある樹木は他にあまりない。
アオキは葉が少し似るが、本種より葉柄が明らかに長く、全体により大型。
イズセンリョウは名前は似ているが違う仲間で、葉が互生。鋸歯も鈍く、あまり似ていない。関東~琉球の暖地。
シマイズセンリョウはイズセンリョウの仲間で、鋸歯が粗いため一見似ているが、こちらも葉が互生。九州南部以南。
マンリョウも名前が似るが、葉は互生であり特に似ていない。

生態

開花特性とポリネーター

本種は虫媒であり、コウチュウ目やハチ目、ハエ目などの昆虫が訪花することが知られている6)
花は両性花で雌性先熟だが、葯の裂開後も雌しべは受粉可能で自家和合6,7)

種子散布

本種の果実は鳥によって食べられることが知られており8)、鳥散布と考えられる。
本種は分布域外においてもしばしば山野への逸出が確認されるが1,2)、庭木として植えられた株の果実が鳥によって運ばれたことが原因として考えられる。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)茂木透・勝山輝男・太田和夫・崎尾均・高橋秀男・石井英美・城川四郎・中川重年 2000. 『樹に咲く花―離弁花〈1〉 (山渓ハンディ図鑑) 改訂第3版』山と溪谷社.
5)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
6)Tosaki, Y., Renner, S. S., & Takahashi, H. (2001). Pollination of Sarcandra glabra (Chloranthaceae) in natural populations in Japan. Journal of Plant Research114, 423-427.
7)von Balthazar, M., & Endress, P. K. (1999). Floral bract function, flowering process and breeding systems of Sarcandra and Chloranthus (Chloranthaceae). Plant Systematics and Evolution218, 161-178.
8)Kim, E. M., Kang, C. W., Won, H. K., Song, K. M., & Oh, M. R. (2015). The status of fruits consumed by brown-eared bulbul (Hypsypetes amaurotis) as a seed dispersal agent on Jeju Island. Journal of the Korean Society of Environmental Restoration Technology18(1), 53-69.

編集履歴

2024/3/5 公開