植物 > 被子植物 > アウストロバイレヤ目 > マツブサ科 > サネカズラ属
分布1,4):本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球(~先島諸島)。国外では済州島、台湾。
常緑のつる性木本。被子植物の中では原始的なマツブサ科に属する。果実は赤く熟し、キイチゴを大きくしたような形で特徴的。若い枝には粘液が含まれ、古くはこれを整髪料に利用したことからビナンカズラの別名があるという。
サネカズラの概要
花期1) | : | 8月ごろ |
希少度 | : | ★★(普通) |
生活形 | : | 常緑つる性木本 |
生育環境2) | : | 暖温帯の林縁や常緑樹林内 |
学名3) | : | japonicus「日本の」 |
別名 | : | ビナンカズラ |
サネカズラの形態
葉
葉は長さ5-13㎝2)で互生、低くまばらな鋸歯がある。
表面は光沢があり、しっとりとした触り心地が独特。
鋸歯は目立たないものもある。
常緑樹だが、気温が低いと冬に落葉することがある2)。
葉裏はしばしば赤紫色となる。
花
ふつう雌雄異株。稀に同株で両性花をつける。
花は直径1.5㎝ほど。花被片は8-17枚で黄白色1)。
果実
果実は秋に赤く熟す。
集合果と呼ばれるもので、果床のまわりに多数の果実が集まったもの(キイチゴに近い構造)である。
それぞれの粒(果実)の中には最大5個の種子が入る5)。
未熟な果実は黄白色。
熟した後は鳥によって食べられ、散布される。
樹皮
幹は太さ2㎝程度になる1)。
つるはS巻き(左上)2,4)。
サネカズラの粘液
サネカズラの若い枝は粘液を含む。
古くはこの粘液を整髪料に用い、そのことからビナンカズラ(美男葛)の別名があるといわれる。
識別
以下の特徴が確認できれば、本州~九州では他にあまり似たものはない。
・葉が濃い緑色で、冬に葉が残る(常緑)
・つる性の木本
・葉が1つずつ互い違いにつく(互生)
強いて挙げるとすればツルグミやイタビカズラなどがこの特徴に当てはまり葉の形も若干似るが、ツルグミは葉裏に星状毛が密生し、イタビカズラは葉裏の葉脈が浮き出て目立つことなどから迷うことはない。
また、サネカズラは葉の触り心地がしっとりとして独特であるため、迷ったら触ってみると良い。
状況が許せば、葉を根元からちぎってみて、粘液が確認できればなお間違いない。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編)2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)林将之 2016. 『ネイチャーガイド 琉球の樹木 奄美・沖縄~八重山の亜熱帯植物図鑑』文一総合出版.
5)多田多恵子 2010. 『身近な草木の実とタネハンドブック』文一総合出版.
編集履歴
2021/7/13 公開
2021/7/17 つるの巻き方を追記