植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > ヒノキ科 > ビャクシン(ネズミサシ)属
分布1):本州(岩手県以南)、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。
乾燥した丘陵地に生える針葉樹。葉が尖り、ネズミを刺すというところからこの名がある。
ネズの概要
花期1) | : | 4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
大きさ1) | : | 高さ3-10m |
生活形 | : | 常緑低木~高木 |
生育環境2) | : | 丘陵~山地のやせ地や尾根、岩場 |
和名1) | : | 葉が痛いためネズミを防ぐということから |
学名3) | : | rigidus「硬直した、曲がらない、硬い」 |
ネズの形態
葉
葉は3枚ずつつき(3輪生)、長さ10-25㎜。
葉の表面には白い気孔帯が1本ある。
気孔帯の幅は緑の部分よりも狭い(ミヤマネズは太い)。
雄花
花は4月ごろ咲き、雄株と雌株がある(雌雄異株)。
雄花は前年の枝の葉の付け根につく。
果実
果実は直径8-10㎜、白い粉に覆われる。
樹皮
樹皮は縦に裂け、剥がれる。
この幹にはシダ植物のヒトツバが絡みついている。
識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
ネズとイブキ、ハイネズ、ミヤマネズ、シマムロの見分け方
国内のビャクシン(ネズミサシ)属には他にイブキ、ハイネズ、ミヤマネズ、シマムロ(オキナワハイネズ)の4種がある。
イブキは葉に2形があり、多くが鱗状であることで容易に識別可能。
シマムロ(オキナワハイネズ)は葉の白い部分(気孔帯)が2本あることで明確に見分けられる。
ハイネズは這う樹形が特徴的で、海岸に生えるためふつう迷うことはない。しかし一部の地域ではネズと交雑していることが知られている(後述)。
ミヤマネズは高山に生え、直立しないことからふつう迷うことはない。ネズよりも気孔帯が太いことも特徴。
イブキ | ネズ | ハイネズ | ミヤマネズ | シマムロ | |
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分布 | 北~九 | 本・四・九 | 北・本・九 | 北・本 | 本・小笠原 |
環境 | 海岸/高山 | 丘陵 | 海岸 | 高山 | 尾根 |
葉形 | 鱗状/針状 | 針状 | 針状 | 針状 | 針状 |
樹形 | 匍匐~直立 | 直立 | 匍匐 | 匍匐~斜上 | 匍匐~直立 |
気孔帯 | 2本 | 1本(細い) | 1本(細い) | 1本(太い) | 2本(太い) |
オキアガリネズ(ネズ×ハイネズ)
通常、ネズは丘陵地に、ハイネズは海岸に生え、同所的に見られることは多くない。
しかし、両者には稀に雑種ができ、オキアガリネズJ. x pseudorigida(学名は大橋ら(2015)1)より)と呼ばれている。
特に愛知県では広い範囲で交雑帯が見られることが知られており、ネズに近いものからハイネズに近いものまで見られる。
ネズに似るが、若枝がより太くがっしりした印象を受ける。
樹形は這うものから直立に近いものまで様々で、時に区別が難しい。
ネズの生育環境
乾いた丘陵地や花崗岩上に生える。
暖地の乾いた尾根では比較的よく見られる種である。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
編集履歴
2021/7/1 公開