ネズミサシ(ネズ) Juniperus rigida

植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > ヒノキ科 > ビャクシン(ネズミサシ)属

福岡県東峰村 2021/3/27
※分布図は目安です。

分布1):本州(岩手県以南)、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。

乾燥した丘陵地に生える針葉樹。葉が尖り、ネズミを刺すというところからこの名がある。

ネズの概要

花期1)4月
希少度★★★(やや稀)
大きさ1)高さ3-10m
生活形常緑低木~高木
生育環境2)丘陵~山地のやせ地や尾根、岩場
和名1)葉が痛いためネズミを防ぐということから
学名3)rigidus「硬直した、曲がらない、硬い」

ネズの形態

福岡県東峰村 2021/3/27

葉は3枚ずつつき(3輪生)、長さ10-25㎜。

和歌山県田辺市 2014/3/18

福岡県東峰村 2021/3/27

葉の表面には白い気孔帯が1本ある。
気孔帯の幅は緑の部分よりも狭い(ミヤマネズは太い)。

雄花

福岡県東峰村 2021/3/27

花は4月ごろ咲き、雄株と雌株がある(雌雄異株)。

雄花は前年の枝の葉の付け根につく。

果実

兵庫県三田市 2015/2/12

果実は直径8-10㎜、白い粉に覆われる。

樹皮

和歌山県田辺市 2014/3/18

樹皮は縦に裂け、剥がれる。

福岡県東峰村 2021/3/27

この幹にはシダ植物のヒトツバが絡みついている。

識別

日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。

ネズとイブキ、ハイネズ、ミヤマネズ、シマムロの見分け方

国内のビャクシン(ネズミサシ)属には他にイブキ、ハイネズ、ミヤマネズ、シマムロ(オキナワハイネズ)の4種がある。

イブキは葉に2形があり、多くが鱗状であることで容易に識別可能。

シマムロ(オキナワハイネズ)は葉の白い部分(気孔帯)が2本あることで明確に見分けられる。

ハイネズは這う樹形が特徴的で、海岸に生えるためふつう迷うことはない。しかし一部の地域ではネズと交雑していることが知られている(後述)。

ミヤマネズは高山に生え、直立しないことからふつう迷うことはない。ネズよりも気孔帯が太いことも特徴。

イブキネズハイネズミヤマネズシマムロ
分布北~九本・四・九北・本・九北・本本・小笠原
環境海岸/高山丘陵海岸高山尾根
葉形鱗状/針状針状針状針状針状
樹形匍匐~直立直立匍匐匍匐~斜上匍匐~直立
気孔帯2本1本(細い)1本(細い)1本(太い)2本(太い)
日本産ビャクシン属5種の特徴まとめ

オキアガリネズ(ネズ×ハイネズ)

通常、ネズは丘陵地に、ハイネズは海岸に生え、同所的に見られることは多くない。
しかし、両者には稀に雑種ができ、オキアガリネズJ. x pseudorigida(学名は大橋ら(2015)1)より)と呼ばれている。

特に愛知県では広い範囲で交雑帯が見られることが知られており、ネズに近いものからハイネズに近いものまで見られる。

オキアガリネズ 愛知県豊橋市 2016/8/20

ネズに似るが、若枝がより太くがっしりした印象を受ける。
樹形は這うものから直立に近いものまで様々で、時に区別が難しい。

ネズの生育環境

和歌山県田辺市 2014/3/18

乾いた丘陵地や花崗岩上に生える。
暖地の乾いた尾根では比較的よく見られる種である。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.

編集履歴

2021/7/1 公開