分布1):本州(秋田県・岩手県以南)~屋久島。日本固有種
ツガとともに中間温帯を代表する植生である「モミ・ツガ林」をつくる。本州のモミ属の仲間では最も低地まで分布する。2叉して尖る葉先がとても特徴的。
モミの概要
花期1) | : | 5月 |
希少度 | : | ★★(やや普通) |
大きさ1) | : | 高さ35-40m、幹径1.5-1.8m |
生活形 | : | 常緑高木 |
生育環境2) | : | 中間温帯の丘陵~山地の尾根や岩がちな斜面など |
学名3) | : | firmus「強い」 |
モミの形態
葉と枝
葉は長さ15-30mm、先は2叉し尖るのが特徴的。日当たりのよい成木の葉ではあまり尖らない場合もある2)。
葉裏には2本の気孔帯があるが、ウラジロモミなど同属他種と比べてあまり白くなく、目立たない。
若枝には褐色の短毛がある。
樹形
モミ属の樹形はどの種もよく似ており、強風などの影響がなければ真っ直ぐに伸びる整った形の高木となる。
本属の中でもかなり大型で、成長が早く高木が多い。
樹皮
樹皮は灰白色で、老木では網目状に裂ける2)。
若い木では平滑。
実生
中間温帯でツガと共に林を作る。群落内では実生を見かけることも多い。
より若い実生。実生のうちから葉の先は2叉し尖っている。
識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
また、モミ属全種の比較表については「モミ属」のページをご参照ください。
識別のポイント
葉先が2叉して尖る点で比較的簡単に見分けられる。日本産モミ属には他に4種(ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、トドマツ)あるが、いずれもより高標高地に生えるためあまり同所的には見られない。やや標高の高い場所ではウラジロモミと混生することがある。
また、別属のツガとはよく混生する。
モミとウラジロモミの違い
ウラジロモミの若枝は無毛だがモミの若枝には毛が生える。これが枝葉における最も確実な見分け方である。
また、ウラジロモミとモミは葉の尖り具合が異なる。モミは葉先が2叉してよく尖るが、ウラジロモミはふつう丸い。ウラジロモミの幼木ではやや2叉して尖る場合もあり、またモミの成木では丸く見える場合もあるので注意。
さらに、ウラジロモミの葉裏は名前の通り白っぽく見えるのに対し、モミの葉裏はあまり白くならない点も異なっている。
モミとシラビソ、オオシラビソ、トドマツの違い
シラビソ、オオシラビソは同じモミ属だが亜高山帯に生え、混生しないので普通迷うことはない。またトドマツは北海道以北にあり分布が異なる。形態的には、モミの葉がよく尖り、葉裏があまり白くない点で見分けられる。
モミとツガの違い
モミとツガ(ツガ属)はよく混生する。両者は葉の長さ、葉先の尖り具合が異なっており、慣れればすぐに識別できる。
また、より確実にはツガの若枝が無毛で、葉の基部に葉枕と呼ばれる膨らみがあることを確認すると良い。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
編集履歴
2021/7/1 公開