クスノキ Cinnamomum camphora

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静岡市 2014/4/13
※分布図は目安です。

分布1,2,5,6):関東~八重山に分布するが、本来の自生は九州~屋久島のみで、他の地域では植栽由来の野生化と考えられている。海外では中国、台湾、韓国、ベトナムに自生し、ハワイやアメリカ南部、オーストラリアで野生化している。

となりのトトロにも登場する、日本人になじみの深い常緑樹。薬用として使われる樟脳はクスノキから取れるもので、葉や枝にはその香りがある。暖地を中心に植栽されることも多く、自生かどうかの区別は困難である。

クスノキの概要

花期1)5-6月。
希少度★★(普通)
生活形常緑高木
大きさ3)高さ15-35m
生育環境2)低地~丘陵の照葉樹林
学名3)camphora:「樟脳のような」

クスノキの形態

宮崎市 2022/9/19

葉は葉身長6-11㎝、互生で全縁2)
葉脈が根元付近で3分岐する「三行脈」が特徴的。
成木の葉は縁が波打つ。

宮崎市 2022/9/19

葉裏。やや白い場合もある。
葉をちぎると独特の芳香がある。

宮崎市 2022/9/19

太い葉脈の付け根には「ダニ室」と呼ばれる膨らみが発達する。
近縁のヤブニッケイやシロダモにはこれがない。

大阪府茨木市 2013/11/30

幼木の葉。
幼木ではあまり葉縁が波打たず、ダニ室も発達しないためかなり雰囲気が異なる。
葉柄も赤みが強い場合が多い。

大阪府茨木市 2013/11/30

幼木の葉裏。
白みを帯びる場合が多い。

大阪府茨木市 2014/2/5

鳥によって散布されるため、幼木は道端などでも見られる。
クロガネモチにもやや似るが、葉脈の様子が異なるため識別は難しくない。

東京都文京区 2022/5/15

花は5-6月に咲く。
花序は新しい葉の付け根から出る。

東京都文京区 2022/5/15

花被片は長さ約1.5㎜、内面には細かい毛が生える1)

樹皮

京都市 2013/11/28

樹皮は細かく短冊状に裂ける2)

福岡市 2021/2/11

大きな個体の樹皮にはノキシノブなどの着生植物が多く見られる。

クスノキの巨樹

蒲生の大クス

鹿児島県姶良市 2019/8/29

クスノキは寿命が長く、各地に巨木が残っている。
中でも鹿児島県姶良市蒲生町の「蒲生の大クス」は日本最大とされ、幹周24.22m(高さ1.3mで計測)、樹高30m、樹齢は1500年と推定されている4)

日本最大のクスノキであるばかりでなく、単幹の幹周では国内の全樹種中最大である(「日本最大の樹木」)4)
1952年に国の特別天然記念物に指定された。

大谷のクスノキ

高知県須崎市 2016/7/18

高知県須崎市にある「大谷のクスノキ」は四国最大とされる。
幹周は17-18m前後で、主幹は折れているものの旺盛に生育している。

文献

1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)宮誠而 2013.『列島自然めぐり 日本一の巨木図鑑 ー樹種別日本一の魅力 120ー』文一総合出版.
5)Missouri Botanical Garden, Harvard University Herbaria 2008. 『Flora of China Volume 7』 http://www.efloras.org 2021/8/29閲覧.
6)US Forest Service, Pacific Island Ecosystems at Risk (PIER). Online resource at http://www.hear.org/pier/ 2022/10/16閲覧.

編集履歴

2022/10/16 公開