分布1):本州、四国、九州~トカラ列島。国外では朝鮮半島南部。
樹皮の黒いマツの仲間。耐塩性があって海岸に多く、防風林としてもよく使われるほか、街中にもよく植えられている。
概要
花期1) | : | 4-5月 |
希少度 | : | ★★(普通) |
大きさ1) | : | 大きいもので高さ40m、幹径3m |
生活形1) | : | 常緑高木 |
生育環境1) | : | 海岸沿いに多い。関東以西では内陸にもあり、標高800-900mまで。 |
和名 | : | 樹皮が黒いことからか。別名オマツ。 |
学名2) | : | スウェーデンの植物学者カール・ペーター・トゥーンベリへの献名。 |
識別
日本産マツ属全体の見わけかたについては「マツ属」のページをご参照ください。
日本産のマツ類のうち、葉が2本ずつつく「二葉松」の仲間は本種とアカマツ、リュウキュウマツの3種。
アカマツとの識別
樹皮の色1):アカマツは赤灰色、クロマツは灰黒色。
冬芽1,3):アカマツは赤褐色で、細い鱗片が反り返って目立つ。クロマツは白色で、鱗片はほとんど反り返らない。
葉の硬さ1):クロマツのほうが硬く、手のひらで葉先を触ると痛い。アカマツは相対的に柔らかく、あまり痛く感じない。
葉の樹脂道:アカマツはすべて下表皮に接する。クロマツはすべて葉肉内にある1)。樹脂道の位置は、葉の断面を顕微鏡で観察することで確認できる。
リュウキュウマツとの識別
冬芽1,3):リュウキュウマツは赤褐色で、アカマツに似る。クロマツは白色で、鱗片はほとんど反り返らない。
葉の硬さ1):クロマツのほうが硬く、手のひらで葉先を触ると痛い。リュウキュウマツはアカマツに似て柔らかく、あまり痛く感じない。
葉の樹脂道1):クロマツはすべて葉肉内にある。リュウキュウマツは葉肉内にあるものと、下表皮に接するものと両方が存在する。
分布1):クロマツは本州~トカラ列島に分布。リュウキュウマツはトカラ列島以南の琉球に分布。
形態
冬芽
冬芽:白色で目立つ。鱗片はほとんど反り返らない1,3)。
花
雌花:新しい枝の先に2-4個つき、紫紅色1)。左の写真の枝では例外的に6個の雌花がついていた。
雄花:新しい枝の基部に多数つく1)。
花序:雌雄同株。雌花は新しい枝の先に、雄花は新しい枝の基部につく。
球果(松ぼっくり)
雌花が咲いた翌年の秋に成熟する。卵形~円錐状卵形で長さ4-6㎝1)。
樹皮
灰黒色で縦に裂け、老木は亀甲状に割れる4)。
生態
耐塩性があり海岸沿いに多いが、関東以西では内陸部にも生育する1)。
鹿児島県の桜島周辺の溶岩上にはクロマツ群落が多く見られるが(左図)、マツ枯れの被害を受けて衰退しているという。桜島の植生については寺田・川西(2015)5)に詳しい。
分類
本サイトの裸子植物の分類はChristenhusz et al.(2011)6)による。
利用
外洋に面した平野部の海岸部では、防風のためクロマツ林がしばしば造成される。また、街路樹としても利用されるほか、庭や公園などにも植えられる。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
3)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
4)鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文(著) 2014. 『ネイチャーウォッチングガイドブック 四季を通じて樹木を観察する 431種 樹皮と冬芽』誠文堂新光社.
5)寺田仁志, 川西基博 2015. 大正噴火後100年を経過した桜島の植生について. 鹿児島県立博物館研究報告 34, 29-48.
6)Christenhusz M. J. M., Reveal J. L., Farjon A., Gardner M. F., Mill R. R., Chase M. W. 2011. A new classification and linear sequence of extant gymnosperms. Phytotaxa 19, 55-70.
編集履歴
2021/7/1 公開