植物 > 裸子植物 > ヒノキ目 > イチイ科 > イチイ属
分布1):北海道~九州。国外では色丹島、千島列島(中部以南)、サハリン、朝鮮半島、中国(東北)、シベリア東部。
山地に生えるイチイ科の常緑針葉樹。赤い仮種皮に覆われた種子が特徴的。日本海側で見られるキャラボクはイチイの変種である。
イチイの概要
花期1) | : | 3-4月 |
希少度 | : | ★★★(やや稀) |
大きさ1) | : | 高さ15-20m |
生活形 | : | 常緑高木 |
生育環境2) | : | 山地の尾根など |
学名3) | : | cuspidatus「先端が硬くとがった」 |
別名 | : | アララギ、オンコ |
イチイの形態
樹形
低木~高木。変種のキャラボクでは這う樹形となる(後述)。
葉
葉は2㎝前後、先は尖るが触っても痛くない。
葉裏には2本の幅広い気孔帯があるが、あまり白くなく目立たない。
種子
種子は赤い仮種皮に覆われる。果実ではなく、種子の周りに皮がついているだけのような状態である。仮種皮は種子を完全に覆うことはなく、上部から種子が見えている。
仮種皮を除いたもの。この部分が種子である。
樹皮
樹皮は浅く縦に裂ける。
イチイの種内変異
キャラボク
キャラボクvar. nanaはイチイの変種で、本州日本海側に見られる。
樹形は地面を這い、葉がらせん状に並ぶ。
庭などに植栽されることも多い。
葉は平面に並ぶことはほぼなく、らせん状に配列している。
本来の産地は日本海側であるが、それ以外の地域でも植込みなどに利用されているのをよく見かける。
ダイセンキャラボクについて
鳥取県大山のキャラボクは「ダイセンキャラボク」と呼ばれ、国の特別天然記念物に指定されている。
T. caespitosaとして別種とされていたが、変異の範囲内として現在ではキャラボクに含められている4)。
イチイとカヤ、イヌガヤの識別
日本産針葉樹全体の識別については「針葉樹の見わけかた」のページをご参照ください。
識別のポイント
日本産イチイ科には本種のほか、カヤとイヌガヤの合計3種がある。
3種は葉の並び方などがよく似ているが、葉の形態や果実、種子などに違いがある。
イチイ | カヤ | イヌガヤ | |
---|---|---|---|
属 | イチイ属 | カヤ属 | イヌガヤ属 |
分布 | 北海道~九州 | 本州~九州 | 北海道~九州 |
葉 | あまり平面に並ばない | 平面的に並ぶ | 平面的に並ぶ |
葉先 | 痛くない | 痛い | 痛くない |
気孔帯 | 薄く、幅広い | 濃く目立ち、細い | 薄い~濃く、幅広い |
種子 | 赤く液状の仮種皮に覆われる | 緑褐色の仮種皮に覆われる | 仮種皮に覆われない |
種子は常に見られるわけではないため、葉で見分けられるようになると便利である。
葉はやや不揃いに並び、葉先は痛くない
葉はほぼ平面に並び、先は尖り痛い
葉は綺麗に平面に並び、先は痛くない
葉裏は白い部分(気孔帯)が幅広く、また薄く目立たない。
気孔帯は細く、目立つ。
気孔帯は幅広く、個体により濃淡に差がある。
文献
1)大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司(編) 2015.『改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』平凡社.
2)林将之 2014.『山渓ハンディ図鑑14 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と渓谷社.
3)Lorraine Harrison 2012. Latin for gardeners. Quid Publishing. (ロレイン・ハリソン 上原ゆう子(訳) 2014. 『ヴィジュアル版 植物ラテン語辞典』原書房.
4)米倉浩司 2013. 2007年および2008年に発表された日本産植物の新学名. 植物研究雑誌 88: 320-329.
編集履歴
2021/7/1 公開